超進学校・「麻布」が生んだエロ事師たち

 前〇喜〇という人物がいた。
 安倍政権下で、文科省の事務方トップをつとめた男である。

     *

 前〇喜〇は麻布学園(中学・高校)OBである。
 麻布と言えば、超進学校でありながら自由の気風が強いことで有名だが、前〇が在籍した時代(1967~73)は現在の比ではなかった。
 学園紛争が続いた余波で、ほとんど無政府状態の学園生活だったらしい。

 通常、学園紛争なるものは大学高校を問わず、最後には学校側の勝利で終わる。
 だが唯一麻布学園だけは、何を間違えたか、生徒側の圧勝に終わってしまった。
 学園側は「一切の処分権の放棄」を確約させられた。
 つまりは、何をやっても、退学にも停学にもなることはない。
 やりたい放題の6年間を過ごしたらしい。

 教師なんて小間使いと同じ扱いで、何の権威もない。
 校則どころか、日本国の法律さえ通用しない、治外法権の空間が現出した。
 そんな解放区の中にあって、生徒たちは何を学んだか?
 あるいは、何ものにも膝を屈することのない浩然の気。またあるいは、世間的にはどんな不道徳と思しきことにも、別にいいじゃんと気軽に手を染める破廉恥精神。――そのどちらかを、あるいはときにはその両方を同時に、育んでいったらしい。

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 前〇喜〇もまたきっと、そんな学園生活を送った生徒の一人だったろう。
 だが生来、頭だけはいいものだから、そのままフツーに東大法学部を出て、文部官僚となった(笑)

 だがそこからが、麻布の真骨頂である。
 同じ官僚でも、開成高校の出身者は、官邸の意向に唯々諾々となる。
 だが前〇喜〇は、政策が間違っていると思ったら、堂々と異を唱える。一本筋が通っている。安倍政権にも、何度も反旗を翻した。
 さすが麻布出身者は違う。正義の志士だ、というので周囲からもずいぶん持ち上げられていたらしい。

 これでは官邸はおもしろくない。
 何とかこの男を黙らせることはできないか。少なくともその発言を、誰も相手にしなくなるくらいに、信用を失墜させることはできないか。
 当時官房長官だったのは、菅義偉だ。ご存じ後に総理大臣となった、裏技だけは得意な政治家だ(笑)
 あれこれと前〇喜〇の身辺を嗅ぎまわってみると、たちまちボロが出た。
 何とこの文部官僚は、新宿歌舞伎町の出会い系バーの、2年来の常連だったのだ。

     *

 読売新聞にリークされたこの記事により、持ち上げられていた前川の(笑)評判は一転、見事に地に堕ちた。
 化けの皮が剝がれた。正義の志士を気取っていた御仁が、本当はただのエロ官僚だったんだ、と嘲笑をもって迎えられた。
 まさに首相官邸の、思うつぼとなったのである。――

 と、ふつうなら話はここで終わる。撃沈された沈没船は、二度と浮上することがないのがことわりなのだ。
 だが今回の話には、後日譚があった。
 何とそれから数週間もしないうちに、前川の逆襲劇が始まったのだ。

 口火を切ったのは、あの・・週刊文春であった。くだんのバーで知り合って、前川の相手をしたという女性の手記が掲載されたのだ。
 そこにはこんな、驚くべき内容が記されていた。
「前川さんは、私の体に指一本触れることはなかった。
私の身の上話に、親身になって耳を傾けてくれた。
私は前川さんに救われた。――」

 つまりは、チンピラ官僚の出会い系通いと思えたものは、実はそうではなかった。
 文部行政にかかわる者として、悩める若者たちの声に真摯に耳を傾け、すくいあげる。――すべてはそのための、いわば民情視察だった。
 越後のちりめん問屋に成りすました水戸黄門のように、エロおやじにの姿に身をやつした、お忍びの旅なのだ。……

 この記事のおかげで、前川は奇跡の復活をとげた。
 地に落ちていたはずの評判も、今では従前以上に、もはや天にまで昇った。
 前川は騒動を逃げ切った。勝ち逃げである。
 現在でもなお、文部行政に明るい識者として、テレビに講演会にと引っ張りだこであるる。

     *

 だがしかし、すべてはあまりにも眉唾である。
 それはそうだろう。
 お忍びの視察と言うのなら、ふつうは一回か、せいぜい二回どまりだろう。それが常連と呼ばれるまでに通い詰めるというのは、いかにも不自然だ。

 実はマスコミ関係には、麻布出身者が掃いて捨てるほどいる。
 文春はどうだか知らないが、そういう連中が友だち(前川)の窮地を救おうと助け舟を出した、というところが落ちなんじゃないかな。

 手記を書いたという女性にしても、匿名である。ということは、架空の人物かもしれない。記事自体が、まったくの捏造ということもありうる。
 いや、たとえ現実にそういう人物がいたとしても、あくまで常連の前川の相手をした、数ある女性のうちの一人にすぎない。
 たった一人の発言をもって、全体を推しはかるというのは、あまり科学的なアプローチとは言えないだろう。

 ふつうに考えれば、それ以外の女の子とは、ちゃんとやることをやっていた・・・・・・・・・・
 ただ彼女にだけは、どういうわけか、手を出さなかった。
 あくまで個人の見解だが、その子はよっぽどの、不美人だったんじゃないかな。
「指一本触れなかった」んじゃなくて、指一本触れる気になれないほどの面相だった。
 あるいは触ったら、指が腐ってしまうと思ったのかもしれない(笑)
 それでも「あっちへ行け」と、追い払うのもあんまりなので、話だけ聞いて別れた、というあたりなんじゃないかな。

     *

 それで結局、前〇喜〇は正義の志士なのか。それともただのエロ官僚なのか。一体、そのどちらなんだ、って?

 もちろん真相は藪の中。神のみぞ知るだ。
 だが自分は、ふと思う。どうしてその2つの、どちらかに決めなくていけないのか?
 同時にその、両方であってはいけないのか?

 先にも書いたろう。麻布の出身者はときに、何ものにも屈せぬ浩然の気と、不道徳な破廉恥精神を併せ持つ。
  前〇喜〇もまた、正義の志士であり、なおかつ同時に・・・・・・・エロ官僚だった(笑)
 そんな二律背反を当たり前に併せ呑む、不思議な器の持ち主なんだよ、きっとあいつらは。――

                **

<追記1>
 宮台真司(注)という男がいる。なぜかこちらは、そのまんま実名暴露だ(笑)
 肩書は東京都立大学教授だが、何とこいつも麻布学園のOBである。

 口先だけの大したことのない学者だったが、2022年に大学のキャンバスで起きた謎の襲撃事件のために、一躍悲劇のヒーローとなった。
 それで名前が売れたので、コメンテーターとしても、あちらこちらに顔を出すようなった。

 ところがつい先日、女子大生(教え子ではないらしい)に手を出していたことがバレて、大学から懲戒処分を受けた。
 ネットでも、叩かれるというよりもまず、笑いものになった。

 なんだこれじゃあ、先輩OBの前〇喜〇と、まったく同じパターンじゃないか。
 何やってんだよ、まったくおまえらは、って話だ(笑)――

<追記2>
 あれまあ何と、昨年不倫だか買春だかで、政務官辞任した山田太郎(注)も、やっぱり麻布0Bじゃないか。

 笑うしかない。

 これ以上追記が増えないことを、ただただ祈るばかりだ。――

<補注>
 前述のように麻布学園は、学園紛争によって生徒側が勝利した、唯一無二の事例である。
 そんな奇跡が可能になった理由は、ひとえに麻布が
 (1)私立学校だったから
 (2)なおかつ大学ではなく高校であった。そのうえ義務教育の中学まで併設されていたから
 である。

 考えてもみたまえ。紛争のゴタゴタが続き、毎年何か月も授業が行われない。
 そんなことが世間に知れたら、学園の評判にかかわる。もはや子供を預ける親はいなくなり、生徒募集に響く。当然経営があやうくなる。
 そんな事態を危惧した経営陣が、なんとか事態を収拾しようとした。外面そとづらだけでも取り繕おうと、全面的に生徒側に、譲歩してしまったわけだ。

 これが公立学校だったら、学校側は強気である。生徒募集がどうなろうが、公立なら財布には影響はないからだ。
 同じ私立でも、大学ならやはり関係がない。
 少なくともあの当時は、大学なんて単なる、卒業資格の授与機関であった。誰も授業なんて期待していない。学生はもちろん、その親も、そしてもちろん教授たちも(笑)、授業がなければかえって大歓迎なのだ。
 紛争が長引いても、生徒募集にかかわるなんてことは、まかりまちがってもなかったのである。

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