<受験アドバイザー>高2模試は受けてはいけない。

 難関大学を志望するなら、そもそも模擬試験を受けても意味はない。

 模試の目的は、学力の把握である。
 現在の自分の学力を知り、その範囲内で合格可能な、もっとも高偏差値の大学を受験する。ついでに滑り止めも見つくろう。
 そうやって受験校を、調整するためにあるのだ。

 行きたい大学はここしかない、と最初から決めていて。だめならもう一年、浪人する覚悟があるのであれば、利用価値はないはずだ。

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 難関大学を志望するなら、とりわけ高2模試は、絶対に受けてはいけない。
 母集団に、問題があるからだ。

 たとえば東大以外行く気がないような、トップ進学校の連中は、高2模試なんか見向きもしない。
 前述の理由で、そもそも模擬試験自体を受けないのだから、いわんや高2模試をや、というわけだ。

 ごくまれに、「高校2年のときに模試を受ける」者もいないではない。でも「高2模試」を受けるわけではない。1学年上の模試を受ける。
 つまりは高校3年生や浪人生のメンバーに交って、ふつうの模試を――本番の入試と同じレベルの問題にトライする。
 現在の自分の学力の立ち位置を知って、あと一年どの科目をどのくらい勉強したらいいかを、計ろうというわけだ。
 中には高2で東大模試を受けたらA判定が出てしまい、なんだかバカバカしくなって、残りの1年は遊んで暮らした猛者もいるらしい(笑)

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 実際に東大に合格していくような、トップ進学校の連中は高2模試なんか受けない。つまりは高2模試の母集団に、「彼ら」はいない。
 そんな模擬試験で、正当な合否判定なんてできるはずがない。

 たとえばどこか下々しもじもの高校で、そこそこ腕に覚えがある生徒が、高2模試を受けたとする。
 本当のトップレベルの高2生はそこにはいないから、いきおい「彼」が、成績優秀者に名を連ねることになる。間違って、全国順位1位となってしまうかもしれない。
 第一志望を東大にして、合否判定を仰いだとする。当然A判定が出てしまう。

 模試の主催者も、本当はわかっているのだ。
 ウチの高2模試なんて、一流の生徒は受けてません。ショボイやつらしか、いない集団です。たとえそこで成績がトップでも、東大なんか受かりはしません。――たがそんな本音は、もちろん口が裂けても漏らすわけにはいかない。
 そんなことを言ったら、もう来年から誰も高2模試なんか受けなくなる。営業上の配慮からも、A判定を出さざるをえないのだ。
 たとえ第一志望を理Ⅲと書いたとしても、全国トップなんだから、合格確実なのだ(笑)

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 実際に理Ⅲに行くような連中は、母集団に一人もいないのに。――
 そんなデタラメな判定を信じて、生徒本人が勘違いしてしまうのが一番怖い。

 そんな高2模試の罠に、見事にはまってしまったのが、かつての我が家の愚兄である。
「愚」というのは、謙譲語として用いたのではない。本当にバカだったのだ(笑)
 この愚兄が高校2年の夏に、「高2模試」を受けた。というより、下々の学校の進路指導の一貫として、全員参加させられたらしい。

 そこでたいした考えもなく、半ば冗談で「第一志望東大」と書いて出したら、何とA判定が出てしまった。
 それを見たこの男は、自分は天才にちがいないと、すっかり思いあがった。
 ご記憶の方もあると思うが、その当時は
「勉強して成績がいいのが秀才。何も努力もしないで成績がいいのが天才」
という、得体の知れない定義があったからだ。

 高校2年の夏と言えば、そろそろ受験勉強を始めるころなのに、自分は天才と信じているからそれをしない。
 それまで通りに一年間遊び惚けて、迎えた高3の夏。
 一年ぶりに受けた全国模試では、当然のことながらすべての志望大学の判定が、掌を返したようにEに変っていた。

 呆然としたあいつは、
「たった一年で、A判定がE判定になるのかよ。天才なはずじゃなかったのかよ」
と、口をとんがらせてブー垂れていたっけ。

 バカというのは、救いがたいものである(笑)

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