カメ(スマホ)がウサギ(PC)に勝つ逆説

 世の中「逆転現象」とか、「裏目に出る」とかいうことがある。

 たとえば、パソコンはスマホより高性能だ。
 CPUもハイスペックなわけだから、同じ作業をするなら、普通はPCの方が速いにきまっている。

 ところが株式投資やらで、デイトレードみたいなことをやっていると、ときどき奇妙な現象が起こる。

     *

 何か突然、大きなニュースが飛び込んでくる。戦争やら大震災やらの、世の中がひっくり返るような事態だ。
 当然相場は短時間で、一気に動き出す。

 そんなときは、証券会社のサイトや、売買アブリがダウンしてしまう。半分フリーズして、いくらクリックしてもなかなか反応しなくなる。

 それはそうだろう。
 この世界には、自分のようなしょぼい個人投資家だけではない。何十億円という単位の金を動かす、大口のファンド(投資会社)がいる。 
 そいつらが最近は、「高速取引(注)」をする。大型コンピューターを駆使した、自動のプログラムで、一秒間で数千回もの売買を繰り返す。
 そうなれば当然、取引量の急激な増大に、処理が追いつかなくなる。負荷に耐えかねたサイトが、ダウンするのも当然なのだ。

 まあサイト自体がポシャっているというよりも、自分のショボいPCが、スピードについていけてないだけなのかもしれない(泣)
 いずれにしても、とりあえず騒ぎが収まるまでの数十分は、指をくわえて見ているしかなくなる。 
 見ていると言っても、チャートの表示すら、ままならないことも多いのだが。

     *

 だがしかし。
 だがしかし、そんなときふと思い出す。
 確かスマホでも、株の売買はできたっけ。

 一応試してみるか、とスマホをいじってみると、何とこちらはまったく問題ない。
 いつもと同じように、それなりにサクサクと、取引ができるのだ。

 それもそのはずだ。
 スマホ用の取引サイトは、PCのものとは別だ。取引アプリも、スマホ専用の仕様である。
 そんなもの本腰入れて、使うやつなんていない。
 外出中のヒマつぶしか、あるいは仕事中のサラリーマンが、トイレでこっそり見るくらいだ。
 
 今回の元凶のヘッジファンドや、ましてや高速取引が、スマホを使うなんてありえない。
 だから騒動の影響を、まったく受けずにすんだのだ。

     *

 ふだんはスマホはのろまなカメで、PCは俊足自慢のウサギである。

 だがしかしこんな奇跡のような、偶然の状況のもとでは、立場が逆転することもある。
 
 そうだった。
 今こそ確かに、カメはウサギに勝つことができたのだ。――

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