こいつらが法定相続人かよ

(話は前回から続く)

    * 

 ご推察の通り、私には子がない。
 年齢的にも先はないから、子孫を残せなかった「負け犬」である。だからこそこんな、負け惜しみの文章を書いているわけだ。

 跡取りがいないことで、ついでに配偶者もいないことで、一つ現実的な問題が生じている。
 相続の問題である。
 一応ぎりぎり黒字の人生を歩んできたので、死ねば多少のものが残る。
 まずは親から受け継いだ、実家がある。老後に備えた、そこそこの貯えもある。
 私が近々野垂れ死にして、「老後」がなくなったときに、そいつが全部「余って」しまうのだ。

 もちろん世間的には騒ぐような金額ではないが、私にとっては必死になって働いて得た、血と汗の結晶である。
 その行方が、気にならないわけはない。

     * 

 法定相続人というのを、ご存じだろうか。
 故人が何の遺言もしなかった場合、その遺産が自動的に懐に入る人物(たち)である。

 子孫を残せない負け犬の私にも、何とこの法定相続人だけは、しっかり存在するのである。
 子も妻もなく、父母もとうに亡い場合、故人の財産はその兄弟のものとなる。兄と二人兄弟の私の場合、これに該当するのだ。
 そしてさらに、兄弟がすでに亡い場合には、何とその子供たちが、つまりは故人の甥や姪が財産を相続する。――そういう法律上の、システムになっているのだ。

 おかしいと思わないか? 
 親から子に財産が受け継がれるのは、心情的によく理解できる。
 だがなぜ兄弟なのか? ましてや甥っ子なのか?
 拡大解釈にもほどがあるだろう。 

     *

 そうなのだ ここでまた、あの「血族」の亡霊が姿を現す。

 もうとっくに崩壊している古い「家」の制度が――「一族」の概念が、まだ法律の中には旧態依然と、居座りを続けている。
 そんな封建時代の遺制は、現代的な感覚で生きる者にとって、とうてい承服できるものではない。

 私たちの今の社会の実態に、とっくに合わないものとなったそんな時代遅れの制度は、早急に改正が必要だろう。

    * 

 (話は次回に続く)

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