(話は前回から続く)
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ご推察の通り、私には子がない。
年齢的にも先はないから、子孫を残せなかった「負け犬」である。だからこそこんな、負け惜しみの文章を書いているわけだ。
跡取りがいないことで、ついでに配偶者もいないことで、一つ現実的な問題が生じている。
相続の問題である。
一応ぎりぎり黒字の人生を歩んできたので、死ねば多少のものが残る。
まずは親から受け継いだ、実家がある。老後に備えた、そこそこの貯えもある。
私が近々野垂れ死にして、「老後」がなくなったときに、そいつが全部「余って」しまうのだ。
もちろん世間的には騒ぐような金額ではないが、私にとっては必死になって働いて得た、血と汗の結晶である。
その行方が、気にならないわけはない。
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法定相続人というのを、ご存じだろうか。
故人が何の遺言もしなかった場合、その遺産が自動的に懐に入る人物(たち)である。
子孫を残せない負け犬の私にも、何とこの法定相続人だけは、しっかり存在するのである。
子も妻もなく、父母もとうに亡い場合、故人の財産はその兄弟のものとなる。兄と二人兄弟の私の場合、これに該当するのだ。
そしてさらに、兄弟がすでに亡い場合には、何とその子供たちが、つまりは故人の甥や姪が財産を相続する。――そういう法律上の、システムになっているのだ。
おかしいと思わないか?
親から子に財産が受け継がれるのは、心情的によく理解できる。
だがなぜ兄弟なのか? ましてや甥っ子なのか?
拡大解釈にもほどがあるだろう。
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そうなのだ ここでまた、あの「血族」の亡霊が姿を現す。
もうとっくに崩壊している古い「家」の制度が――「一族」の概念が、まだ法律の中には旧態依然と、居座りを続けている。
そんな封建時代の遺制は、現代的な感覚で生きる者にとって、とうてい承服できるものではない。
私たちの今の社会の実態に、とっくに合わないものとなったそんな時代遅れの制度は、早急に改正が必要だろう。
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(話は次回に続く)
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