自殺をしない/させないための、 究極の予防策がある。
たえず宝くじを、買い続けることだ。買い与えることだ。
最低単位でいい。たとえば1枚だけ、100円でもいい。
そのかわり間をあけずに、切れ目なく買い続けて、いつでも抽選待ちになるような、状態を作っておくことだ。
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たとえばあるとき、どうしても死にたくなったとする。首くくりのために、ロープに手が掛かったとする。
そのときにふと、宝くじのことを思い出すのだ。
待てよ、確か明後日が抽選日の宝くじが、1枚あったっけ。
もしあれが、当たっていたらどうしよう?
1億円が当たっていたら、たいていの人生の問題は解決する。
それどころか、自分が自殺した後に、1億円が当たっていましたということになったら、目も当てられない。
そんなお金があれば、あんなことも、こんなこともできるのに。その前に自分で死んでしまったというんじゃあ、死んでも死にきれない。とっても成仏できない。
自分の気持ちだけじゃあない。あいつ一億円が当たるのも知らずに、さっさと首くくっちまったぜ、と世間の物笑いになるのは必定なのだ。
ネットニュースにでもされて、末代まで恥を晒しかねない。
もし相続人でもいれば、そいつはきっとホクホク顔だろう。――
そんな考えが頭をよぎったら、誰もが思いとどまる。
ロープに伸ばした手も、思わずひっこむ。
かくして今日もまた一件、自殺が抑止されたのだ。
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この見事なまでの自殺対策も、実は私の発案ではない。
為政者たちはもうとっくの昔に、そのことがわかっていたのだ。
遠い古代ローマの時代から、世界中の国々で宝くじが売られていたのは、それゆえなのだ。
それはそうだろう。王侯貴族であれ何であれ、およそ上級国民たるもの、領民に自殺されてしまってはかなわない。
そんなことになっては、もう年貢が、ふんだくれなくなってしまうからね。
ん? 最近では年貢と言わずに、税金と言うんだっけ? まあ、おんなじことだ。
下々に贅沢をさせたら、自分の取り分が減ってしまう。だからといって死なれてしまっては、元も子もない。
生かさず殺さず、って言うだろう。食うや食わずの状態で、いかに永遠に搾り取るか。それが統治者の知恵、腕の見せ所なのだ。
だとしたら、紙切れ一枚のいじましい夢を、与えておけばいい。そうすれば愚民たちは、そのただ一縷の希望にすがって、不平一つ言わずに、今日もまた牛馬のように働き続けてくれる。――
きっとそのためにこそ、宝くじという、このすてきなシステムが創案されたのだ。
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たぶんね(笑)
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