大谷翔平がロサンゼルス・ドジャースに移籍したね。
大谷が一番喜んでいるのは、ナショナルリーグに変われたことじゃないかな。
それまでのアメリカンリーグの審判どもの、未来永劫に続きそうないじめ地獄から、ようやく脱することができたのだから。
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アメリカの野球には、日本とはいろいろな違いがある。
中には我われ日本人にはとても納得できないような、不合理極まりない陋習もある。
愚にもつかない馬鹿げたルールを、同じように愚にもつかない国民が(笑)、神聖にして犯すべからざる伝統として、150年も守り抜いているのだ。
審判についての考え方も、またそうである。
日本の場合、少なくともプロ野球の場合は、審判は選手と対等な地位と意識されている。
判定が納得できなければ、打者は思わず球審の方を振り向く。「えー!」と声を上げる者もいる。
投手であれば、「今のがボールに判定されるの? 低すぎたの? それとも外にはずれていたの?」と、ジェスチャーで問いかける。審判の方も、それにジェスチャーで答える。掌を下に振れば、「低かったからだ」ということになる。
だがアメリカは、そうではない。
あちらでは、審判の権威は絶対とされる。判定に異を唱えることは、聖なる存在に対する冒涜に他ならないのだ。
食って掛かって抗議した選手は、退場となる。
さすがに上記のようなジェスチャーだけでは、退場にはできない。その代わりに陰湿な、意趣返しが待っている。
目をつけられた選手は、当分の間、プレーのたびごとに不利な判定を食らうことになる。打者ならばボールをストライクと、投手ならストライクをボールと故意に誤審する。アウト・セーフの判定についても、同様である。
俺たちに逆らうとこういうことになるんだよ、と思い知らせるために、徹底的にイビリ抜くのだ。
何のことはない。やっていることは、中学生のいじめっ子と変らない。何が聖なる存在だよ、とツッコミたくなる。
なんでそんなおかしな伝統があるのか。他にはどんな不条理があるのかは、過去投稿を参考にしてほしい。
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大谷翔平はこのいじめ地獄に、見事にはまってしまった。ターゲットになってしまった。
うかつにも初年度の大谷は、日本式を持ち込んでしまった。「えっ? 今のは低かったの?」と、ついやってしまった。
これがやつらには気に食わない。この野郎、新人のくせに生意気だ、というので執拗な誤審イビリが始まったのだ。
一人二人の審判ではない。リーグの審判団には、当然横のつながりがある。全員で示し合わせて、みんなでやっつけようぜ、ということになった。
ご存じの通り、大谷は二刀流だ。投打の両方で、こいつを食らうことになる。打者のときはストライクと判定され、投手のときはボールとコールされる。被害も二刀流なのだ。
大谷も途中からそれに気が付いて、郷に従うように心がけた、
不当な判定を食らっても、ただ唇を嚙むだけで、ポーカーフェイスでプレイを続けた。
だがそれでも、やつらは許してくれない。いったん始まったいじめは、結局5年間、終わることはなかった。
もちろんアメリカ社会だもの、そこには当然、人種偏見もからんでいる。白人審判団は、東洋からきた黄色い猿なんかに、活躍されてはおもしろくないのだ。大リーグの本当の怖さを、こちらの面でも思い知らせてやろう、というわけだ。
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一試合でたった一度や二度、ストライクとボールが入れ替わったくらいなら、大勢に影響はないだろう?――と考えるとしたら、事態の深刻さがわかっていない。
野球選手はみんな頭の中に、自分なりのストライクゾーンを持っている。ここにボールが来たらストライクだから、バットを振らなくてはいけない。ここなら見送る、という区別を、しっかり体で覚えているのだ。
いったん誤審を食らって、「えっ、今のがストライク?」となると、そこが狂ってくる。次に同じところにボールが来たら、振るべきなのか、見送るべきなのか。――認識の枠組みがぶれて、迷いが生じる。その後のすべてのプレイに、影響が及ぶのだ。
そのうえそれが、故意による誤審とわかっていれば、不条理への怒りが加わる。精神にも変調をきたして、ガタガタになる。
その結果、スランプに陥る。ときには長いトンネルを、永遠に抜け出せなくなり。最悪の場合は、選手として「終わってしまう」ことだってありうるのだ。
審判団が狙っていたのも、それなのだ。
寄ってたかって、大谷翔平を「つぶしにかかった」わけだ。
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でも大谷は、2度もMVPを取ったじゃないか? いつがスランプだったんだ?――それはおそらく、理解が違う。
大谷はずっと、スランプだったのだ。スランプだったにもかかわらず、あれだけの成績を残した。それが大谷の、超人たるゆえんなのだ。
もし審判団との軋轢がなかったら、毎年あとホームラン10本、あと5勝は上げられただろう。
世界中が驚いているあの成績は、あれでもまだ大谷の、本当の姿ではないのだ。
大谷は全然、納得がいくプレーができない。能力を発揮できていない。――そしてそのいらだちこそが、今回の移籍の最大の理由だったにちがいない。
ご存じのように、大谷は金には頓着しない。大金積まれたから、チームを変わったわけじゃない。
アメリカではチームの移動は当たり前の、日常茶飯事だ。だが日本人である大谷のメンタリティーは違う。ずつと応援してくれたファンへの感謝も、育ててくれた球団への義理も感じている。恩を仇で返したくはないから、本当はエンゼルスを、出たくはなかったはずだ。
「ポストシーズンを狙えるチームでプレーしたい」というのが、移籍の最大の理由と伝えられている。だけどエンゼルスだって、今後も優勝できないと決まっているわけではない。日ハムにいたときのように、マイク・トラウトや仲間と一緒に、栄冠をめざす選択肢だってあったはずだ。
だがアメリカンリーグにいたままでは、あの審判団の魔手から逃れられない。いつまでもモヤモヤと、不完全燃焼で終わってしまう。
天敵のウジ虫どもが、どうにも我慢できない
野球人生の最後を、何一つ思い煩うことなく、プレーに打ち込みたい。
疑心暗鬼に、取りつかれることもなく。フラストレーションとも、イライラとも縁のない。
雲一つない晴れやかな気分で、思う存分暴れまくりたい。――そう考えたのが、最大の移籍の動機なんじゃないかな。
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ナショナルリーグの審判もやつらとつるんでいて、いじめがまたそのまま引き継がれる、なんてことはよもやあるまい。
もはややつらは、大谷に手出しはできない。
そのうえドジャースとの契約額は、10年でおよそ1014億円という、史上最高の天文学的数字となった。
あれだけ手を尽くしたのに、みんなでつぶしにかかったのに、大谷はそれを乗り越えて、押しも押されもせぬ大選手に成長してしまった。
やつらは全員で歯がみして、地団駄踏んでいるのにちがいない。
そしていかな人格者の、大谷君でも。この件ばかりは、品位も礼節も忘れて。
――ざまあみやがれ、クソ野郎ども!
と口汚く罵りながら、きっと腹の中で、高笑いをしているのにちがいない(笑)
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