ワイドショーが天皇制をつなぎとめる

 (話は前回から続く)

 象徴天皇制は、戦中派との妥協の産物――

 だがもし妥協案であるとすれば、それは仮のものであり、一時的なものだ。
 戦中世代が退場したあとは、廃止の方向に向かうのが自然なのだ。

 だがしかし、このことについて、改憲を叫ぶ声はあまり聞かない。
 二十一世紀の世の中に、どうして王様が居るんだ? なぜ要るんだ? 実権はないとは言え、ちゃんと税金払わせろよ――などとわめいているのは、この私くらいなのだ。

     *

 それはきっと、こういうことだったろう。
 天皇・皇族は、今や最大のセレブとなった。
 テレビの画面の向こうの、憧れの世界の人。ワイドショーが追いかけ、常にゴシップの種となる、 知らぬ人のない一番の有名人。

  おとぎの国から抜け出したような彼らの存在は、とりわけ女たちの胸を掻き立てた。
 それはそうだろう。白馬の王子様が現れるには もちろん王様が必要だった。白雪姫も。シンデレラも。それを言うなら、ベルばらだって。
 そのお住まいも、着こなしも、仕草も、言葉遣いも。私たちを夢見させ、希望すら与える。
 その辺の俗物芸能人など比ぶべくもない、天性のスターなのだ。 

 ヒール役のセレブなら、悪口を浴びせる者もあるだろう。
 だがその育ちのよさ、鷹揚なお人柄と品位を前にして、誰が反感を持つことがあろう。
 それを廃止しろなどと叫ぶというのは、ただ酷薄な、天邪鬼だけなのだ。

 そうだった。 
 天皇・皇族は今やそういうものとして、国民から認容され、必要とされているのだ。
 それを象徴と言うのなら、確かに象徴だろう。
 いずれにしてもそれは、現人神として統帥した時代とはまったく違う形で、生き延びようとしているのだ。

     *

 天皇・皇族は、今や最大のセレブにすぎない。――
 だがしかし、たとえそうだとしても、それが国民に夢と希望を与えるのなら、どうしてお前はわざわざ廃止を叫ぶのか?

(話は次回に続く)

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