あらゆる選挙活動を、禁止にする。
現在はあたりまえに、合法とされているものも含めて。
選挙公報やそれに類する、公的主催によるもの以外はなくして、一切金のかからない選挙にする。
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自民党の「パーティー券キックバック問題」が、大騒ぎだ。
もちろんとんでもない、やってはいけないことである。
だがこの件について多くの国民は、あやまったイメージを抱いているのかもしれない。
つまりは自分たちが、金をちょろまかしたときにやるであろうことを、政治家たちもきっとやっているにちがいないと。
テレビの時代劇の悪代官が、「オヌシも悪よのう」と言いながらやっているように。高笑いしながら、酒食にふけっていると。
もちろんそれも、多少はあるかもしれない。けしからんことだ。
だが政治家の金のほとんどは、きっとそうではない。
けっして彼らの自身の楽しみのために、使われているわけではないのだ。
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彼らの金の大半は、選挙に通るために使われている。
政治には金がかかる。
今後もずっと議員であり続けるためには、その地位を再生産するためには、金が必要だ。
少なくとも彼らはそう考えて、金を集めているのだ。
もちろん買収費用とか、裏金とかいうものは違法なんだから、どんどん摘発しなくてはいけない。
だがそれだけではない。
事務所を構える。ビラを作って配る。ポスターを貼る。選挙カーに乗って連呼をする。電話で投票を依頼する。ハガキを出す。……
現職であれば、政治活動報告書を、支持者に封書で送ったりもする。
そんな当たり前に行われている、すべての政治活動にお金がかかる。金をかければかけるほど、当選が近づくと考えられているのだ。
だがあんな選挙活動が、実際に効果があるのか?
連呼にせよ何にせよ、名前を聞いたことがある有名な人だから投票する、なんて有権者が本当にいるのか?
政治家たちが勝手にそう思い込んでいるだけで、すべては無意味な茶番にすぎないのでは?
みんながやっているのに、自分だけやらなければ落選する。そう不安になるのはわかる。
だがだとしたら、みんなで一斉に、やめにしたらいいだけだ。
全面禁止にしてしまえば、みんな同じ条件だ。ムダな競争なんてなくなって、一切金はかからなくなる。
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もしその逆に、あんな選挙活動に、実際に効果があるのだとしたら?
だとしたら、ますます禁止にしなくてはいけない。
効果のある麻薬が違法であるように、いますぐすべてを、やめさせなくてはいけない。
だってそうだろう。
政治のことはよくわからないけど、笑顔で手を振られたから、あの候補者に投票する――そんなレベルの有権者が国を動かすとしたら、それはただの衆愚政治だ。
ポピュリズムの方がまだましだ。ポピュリズムは政策で、民衆に媚びるのだから。
ポスターの写真が誠実そうだから、というのではただのルッキズムだ。アイドル歌手の人気投票と、何も変わらない。
候補者の主張をしっかり吟味して、国の行く末を考える。それが民主主義の、本来の姿だろう。
現状はそれとは、あまりにもかけ離れすぎている。
だとしたらやはら、アホらしい空騒ぎはすべてNGにして、本来の政治に立ち返るべきなのだ。
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候補者の主張をしっかり吟味して、国の行く末を考える。――そのためには、選挙公報だけで十分だ。
政見放送だってあるじゃないか。
それでは不足だというのなら、同様なものを、もっと拡充すればいい。
選管であれ、国であれ、自治体であれ。公が主催し、費用も負担する、平等かつ均一な選挙運動なら、いくらやってもいい。
政治討論会でもいい。演説会だって、選管主体のものならいい。
ポスターだって、白黒の文字だけのものを、自治体が張り出せばいいだけのことだ。
それなら候補者本人は、一銭も金はかからない。
文字だけで書いた政策では、誰も読みはしないって? そんなことを言う連中は、そもそも政治に参加する資格なんかありはしない。初めから選挙権を、はく奪するべきなんだよ。
そうして、くだらない選挙運動をすべてなしにして、金のかからない制度を作る。
そのうえで、それでもなお裏で、金を動かそうとする不届き者は。
それこそどんどん捕まえて、ブタ箱に叩きこめばいいんだよ。――
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