<裏ルート>花粉症の薬をかくも安価に入手する

 花粉症の季節だから、薬がほしい。

 ちゃんと耳鼻科に行ってもらうのが一番いいが、さんざん待たされたりするのも億劫だ。何とか売薬で済ませたい、と思っている人も多いのではないか。

 だが何も考えないで薬局に行って、目についた薬に手を伸ばしたりすると、思わぬ高値で買わされることになるので注意したい。

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 テレビでさかんにCMを流している「アレ〇ラ」は、いくらするのだろう?
 近所の薬局では、28錠入りの箱で1886円となっている。1錠当たりに換算すると、67円となる。

 ちなみにこの換算は大切である。同じ薬でも14錠入り、28錠入り、56錠入り、84錠入り……と種類があるから、ぱっと見だけでは安さの比較はできない。
 さらに中には、一錠当たりの有効成分量が違う、ということもあるので注意が必要だ。
ちなみにこの投稿の場合、すべて「一錠あたり60mgのフェキソフェナジン塩酸塩を含む」ものである。

 だがこうして紹介した商品を、自分が手に取るかと言うと、それはない。薬の世界の内情を、もっとよく知っているからである。

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 「ジェネリック」という言葉をご存じだろう。

 すでに一般に、広く使われている薬があるとする。
 その製造は、開発を手掛けた製薬会社が一手に握っており、他社が類似品を販売することは許されない。
 だがそれはあくまでも、特許の定めた期間においてである。特許の切れたあとは、何でもありになる。
 同一成分の薬を、同一の製法で作ってもかまわない。そうしてただ、商品名とパッケージだけを変えて売り出したもの――それが「ジェネリック医薬品」である。

 ジェネリックは、従来の薬をただパクったものだから、研究開発費がかかっていない。先行薬の「七光り」で売れるので、広告宣伝費もかからない。その分お安く、お買い求めになれる。
 抗アレルギー薬で言えば、「アレ〇ラ」のジェネリックで「アレ〇ビ」というのがある。
名前までパクっていると、嘲ってはいけない。アレルギーの薬であることを示すために、どうしてもみんな似たような名前になるのだ。
 この「アレ〇ビ」の値段が、同じ薬局で一錠あたり46円。先行薬の「アレ〇ラ」が67円だったから、ジェネリックにすると大ざっぱに言って3分の2の出費で済むわけだ。

 そんなまがいものは、怖くて買えない。口に入れるもの、しかも直接に健康にかかわる薬剤くらいは、少々高くてもちゃんとしたものを飲みたい。――そんなふうに考えるとしたら、あまりにも非科学な、迷信的態度である。
 同一成分で同一製法なんだから、要するに同じものだ。パッケージと名前が違うだけで、同じ効果があるにきまっている。
 当然のことながら、国の検査に合格し、厚生労働大臣の承認を受けた正規薬だ。使わない理由なんてないのだ。

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 ではこうして発見したジェネリックに、自分が早速飛びつくかというと、それもまたない(笑)
 薬も今や、ネットで買える時代だ。
 ネットで値段を調べて比較して、もっとも安いものを選ぶ――という現代の買い物の常識が、医薬品にも当てはまることを忘れてはない。

 というので、すぐにネットで検索してみると。
 何とジェネリックの「アレ〇ビ」が、一錠あたり13円で売られているのだ!

 店舗では46円のものが、13円。3分の1以下だ。いかに通販とは言え、いくらなんでもありえない値段だ。
 どうみたって普通は原価割れだから、まともな仕入れをしていないのは明らかだ。

 すわ、盗品故買(注)か。
 ひょっとしたら、本当にそうかもしれない。
 だが自分には、もう一つ思い当たるふしがあった。
 それは次のような、よにもけしからん手口である。

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 生活保護受給者(ナマポ)は、医療費が無料になるのはご存じだろう。
 そのナマポが、花粉症の症状がひどいと詐病して医者に掛かり、薬をもらう。ろくに診察もしないで薬を出して、金儲けをする医者なんていくらでもいるからだ。

 そうして手に入れた薬を、自分では使わずに、しかるべき筋に横流しするわけだ。原価はタダなわけだから、たとえ市価の5分の1で売ったって、十分小遣い稼ぎになる。
 中には耳鼻科を何軒もハシゴして、薬を集めるやつもいる。そうすれば、ちょっとした商売ができるだろう。
 そんな出所でどころのあやしい花粉症薬が、ネットで叩き売りされている――というのが自分の想像である。

 けっしてありえない話ではない。現にかつて、向精神薬について同様の事件(注)があって、報道されたことがあるからだ。
 向精神薬で起きたことが、花粉症薬で起きないと考えるのは、かえって理にかなわないだろうから、きわめて妥当な推測なのだ。

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 それを盗品と、呼ぶのかどうかはわからない。
 だが不正であることは間違いないから、贓品(注)故買には当たるにちがいない。
 立派な犯罪である。

 だがそれはあくまでも、仕入れ業者が購入した場合だ。
 ネットで買った末端の、善良な(笑)消費者は。
「まさか天下のアマゾンに、そんないかがわしい品物が出品されているとは思いませんでした」という言い訳が立つ。買ったとしても、たぶん(笑)逮捕されることはあるまい。

 そうしてめでたく、一錠67円だったはずの薬を、13円で手に入れる。
 ワンシーズン飲み続けることを考えると、計算すれば一万円の節約になる。

 その差額の万札を握りしめて、盛り場に繰り出して、パチンコでも打とうではないか。
 横流しでちゃっかり儲けたナマポの連中と、なかよく一緒に肩を並べながら(笑)――

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