風俗の女に金を貢がせる、「ヒモ」には二つのタイプがある。
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一つはもちろん、「散財型」である。
女にたかった金を、湯水のように使う。
あるいはギャンブルにつぎ込む。あるいは派手に着飾って、高級車で遊びまわる。
他の女に手を出す、裏切りもある。
金がいくらあっても足りない。
女の子は出勤が増え、毎日働きづめになる。
やがて面やつれして、不幸の影が差す。
女から金だけでなく、命までも搾り取る。悪魔のような人種である。
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一方、「ぐうたら型」のヒモもいる。
仕事もせずに、女に養ってもらっている。その点では、前者と変わらない。
だがこちらの場合、単に働きたくないというだけで、特別金を使うわけではない。
ただ家でゲームなどをして、ぶらぶらしている。あるいは立派に「主夫」をこなすやつもいる。
まあ「ニート」や「ヒッキー」(注)みたいなもんだ。
ただ自分の親の代わりに、女にぶら下がっているというわけだ。
こちらのヒモが付くと、逆に女の子の出勤が減る。
朝、目がさめると、「今日は仕事なんてしなくていいよ。一緒にディズニーランド行こうよ」と甘えたりする。
女の子も、もー、しかたないのねえ、と一緒になって笑いながら、店に欠勤の電話を入れる。
そんなほのぼのとした光景が、繰り広げられる。
まるで子供の面倒を見ているような気持ちになって、母性本能をくすぐる。
昔から「髪結いの亭主」と呼ばれているのは、たぶんおおかたがこれである。
赤ちゃんの世話を、不幸と思う母親はいない。
ちょうどそれと同じように、ヒモ男がかえって女の生き甲斐となり、活力となる。
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かくしてヒモは女にとって、呪いともなり、幸福の源泉ともなる。
前者は唾棄すべき、忌まわしい存在であるが、女はしはしばその陥穽に堕ちる。
後者だってわざわざ歓迎はしないが、思わず頭を撫でてやりたい気持ちになる。
もちろん、同性の評価は逆である。
同性の男から見れば、前者の颯爽としたジゴロこそ羨望の的であり、後者のクズ男は、あまり身を落としたくないタイプである。
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てなわけで最後に、お下劣なジョークを一つ。
――女のヒモになったと言うから、うらやましく思ったら、タンポンのヒモだった。……
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