「純・法治主義」がそれでも松本人志を擁護しない理由

 過去投稿にもあるように、自分は筋金入りの法治主義者である。

 倫理、道徳なんてクソくらえだ。法律に違反しなければ、何をしてもいいと思っている。 

 法律以外、何も人を裁くことはできない。
 とりわけ正義派ぶった世論が、誰かを追い込むような、ネットリンチの風潮を唾棄する者である。

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 そうなると今度の一件(注)で、自分は松本人志を擁護するだろうか? 
 何しろ例の「女の子の証言」以外、性加害の証拠なんて何もない。

 いや、そればかりではない。
 そもそも錯覚してはならない。松本人志は法的に告発されているわけでも、裁判を起こされているわけでもない。
 ただ女の子が、雑誌の記事の中で噛みついているだけなのだから、松本が法的に裁かれることなんてあろうはずもないのだ。

 それなのに今では当人は、芸能界から抹殺されそうな勢いだ。
 何という不当な扱いだろう――と、自分はさっそく松本に同情するだろうか?

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 ところがどっこい、そうはならない(笑)

 それはそうだろう。
 法律が守らなければならないのは、あくまで国民個人としての、基本的人権だ。
 当たり前のことだが、芸能人としての人気や立場まで、憲法が保証するいわれはない。

 松本の出演を、誰かが実力で妨害したというのなら、もちろん法律違反だ。
 だが実態は、そうではない。
 ただファンの心が離れた。それを危惧して、スポンサーがつかなくなった。だから番組がなくなった、というだけ話だ。
 誰が誰を好きになるか、誰を応援するかなんて、法律の関知するところではない。
 嫌いになるのも、そっぽを向くのも、本人たちの勝手なのだ。

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 一市民としての名誉が、傷つけられたというのであれば、もちろん大問題だ。
 松本もこの点を争って、文春相手に裁判を起こすらしい。勝訴の可能性も大いにあるだろう。
 あるいは女性の告発が、まったくの虚言であると、判明することもあるかもしれない。

 だがそれでも松本の名声は、完全回復とまではいかない。
 たとえそれが、イチャモンにすぎなかったとしても。ファンらしきものに告発された時点で、イメージが汚れてしまう。
 それでもう、芸能界ではアウトだ。 

 そもそも松本は、過去の言動でしばしば人権軽視、女性蔑視を問題視されていた。
 性加害はともかく、身持ちの悪さは周知のところ、本人も公言していたきらいもある。
 今回の告発で、それがあらためて認識された。思い出したというだけで、必ずしも根も葉もないわけではない。
 というよりも、そちらの方はむしろ、争いようのない事実なのだ。
 そういうヤツだということは 元々みんなわかっていた 火のないところに煙が立ったわけではない、――とスポンサーは判断するかもしれない。
 その判断にまで、法律が異を唱えて、介入する筋合いはないのである。

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 そもそも松本がスターでいられたのは、――少なくともお笑い界のエースでいられたのは、何ら実質的な、客観的な価値に基づくものではない。
 ファンが何となく「おもしろい人」と思い、スポンサーがそれを追認した。ただそれゆえに、もたらされただけの成功なのだ。
 テレビのこちら側の視聴者が、いわば勝手な気まぐれで、「スター松本」という虚像を結んでいたにすぎない。
 気まぐれで囃されただけのものなら、気まぐれで背を向けられたとしても、何の不思議もない。

 実社会の中での、地に足をつけた成功ではない。
 所詮は水物の、浮華な虚構の世界の中で、持ち上げられていただけの神輿である。祭りが終わってしまえば、もう用なしなのだ。

 失墜に理由なんかない。追放に証拠もいらない。
 もともと「何となく」で祀り上げられただけなのだから、「何となく」うさんくさい、ただそれだけで十分なのだ。
 前は好きだったけど、今は何となくいけ好かない。嫌いなものは嫌いなのであって、根拠などない。顔も見たくないと言われたら、とっとと退場するしかない。

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 もともとが芸能界という、あぶく(泡)の世界で栄耀栄華を謳歌した。

 あぶくなんだから、しょうもないようなきっかけでも、弾けることもある。
 だからといって、未練たらしく不平を垂れていたら、見苦しいったらありゃしない。

 もしそれがいやだと言うのなら、ただただオレのように堅実に、ワーキングプアの道を歩めばよかったんだよ(笑)

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