○○建設絶対反対、と気勢を上げる。
物価高でこんなに生活が苦しいのに、政府は何をしている、となじる。
とりあえず何でもかんでも、「お上」のせいにしておく。
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ご存じ日本は「村社会」だ。
山と海とにはさまれた狭い国土に、みんなで身を寄せ合って生きてきた。
「なあなあ」と「なれあい」で、みんなよろしく、仲良くやってきた。
何か望まれぬ、不測の事態が起きたとき、ふつうなら犯人探しをしたくなる。
でもそんなことをすれば角が立つ。いがみ合いと摩擦が起きる。
せっかくのご近所づき合いも、ギクシャクする。何よりも巡り巡って、自分の方にイジメが回ってきかねない。
村の外に――海の外に仮想敵がいれば、みんなそいつのせいにできる。でもそれも見当たらない。
神がいれば、神を呪える。でもそれも、あまりいそうにない。
困ったな。どうしよう? そうだ。とりあえず、「お上」のせいにしておこう。
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必ずしも、「お上」そのものでなくてもいい。
大企業やら、大金持ちやら、上級国民やら。要するに時代劇の憎まれ役のように、「おぬしも悪よのう」と言いながら、高笑いしていそうな連中だ。
みんなそいつらの、せいにしておく。
大いなる不正や不条理に対して、自分たち庶民は敢然と立ち向かう。少なくとも、涙の抗議ををする。 そんな図式が大好きだ。
英雄とは言わないまでも、悲劇のヒロインだ。そんな役柄を演じるうちに、感極まって涙さえ流し始める。
犠牲者同士、被害者同士の絆ほど、堅いものはない。それがまた仲良し好きの国民の、気分を盛り上げる。
それがはけ口となる。ガス抜き装置となる。カタルシス(注)を得られる。
だから涙の抗議はやめられない。
いつしか中毒のようになって、毎度毎度のことながら、「政府はけしからん」とわめく。
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これじゃあお上の方も、たまったもんじゃない。
別に全部が全部、オレのせいじゃないのに、と。
支持率がけちょんけちょんに下がった「増税メガネ」が、この間泣きべそをかいていたぞ(笑)
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