何でもとりあえず、「お上(おかみ)」のせいにしてみる

 ○○建設絶対反対、と気勢を上げる。

 物価高でこんなに生活が苦しいのに、政府は何をしている、となじる。

 とりあえず何でもかんでも、「お上」のせいにしておく。

     *

 ご存じ日本は「村社会」だ。
 山と海とにはさまれた狭い国土に、みんなで身を寄せ合って生きてきた。
「なあなあ」と「なれあい」で、みんなよろしく、仲良くやってきた。

 何か望まれぬ、不測の事態が起きたとき、ふつうなら犯人探しをしたくなる。
 でもそんなことをすれば角が立つ。いがみ合いと摩擦が起きる。
 せっかくのご近所づき合いも、ギクシャクする。何よりも巡り巡って、自分の方にイジメが回ってきかねない。

 村の外に――海の外に仮想敵がいれば、みんなそいつのせいにできる。でもそれも見当たらない。
 神がいれば、神を呪える。でもそれも、あまりいそうにない。
 困ったな。どうしよう? そうだ。とりあえず、「お上」のせいにしておこう。

     *

 必ずしも、「お上」そのものでなくてもいい。
 大企業やら、大金持ちやら、上級国民やら。要するに時代劇の憎まれ役のように、「おぬしも悪よのう」と言いながら、高笑いしていそうな連中だ。
 みんなそいつらの、せいにしておく。

 大いなる不正や不条理に対して、自分たち庶民は敢然と立ち向かう。少なくとも、涙の抗議ををする。 そんな図式が大好きだ。
 英雄ヒーローとは言わないまでも、悲劇のヒロインだ。そんな役柄を演じるうちに、感極まって涙さえ流し始める。
 犠牲者同士、被害者同士の絆ほど、堅いものはない。それがまた仲良し好きの国民の、気分を盛り上げる。

 それがはけ口となる。ガス抜き装置となる。カタルシス(注)を得られる。
 だから涙の抗議はやめられない。
 いつしか中毒のようになって、毎度毎度のことながら、「政府はけしからん」とわめく。   

     *

これじゃあお上の方も、たまったもんじゃない。

別に全部が全部、オレのせいじゃないのに、と。

支持率がけちょんけちょんに下がった「増税メガネ」が、この間泣きべそをかいていたぞ(笑)
 

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