「蛍光灯生産中止」の思わぬ弊害

 髭剃りは、面倒くさいと思う。

 そもそも何のために、髭を剃るんだ? 本当はケモノにすぎないくせに、自分はケモノではありませんと必死に主張する、 儀式のようなものだ。
 ネクタイぶらさげるのと同じ、無意味な社会的習慣だ。

 髭剃りに掛ける時間が、もったいない。
 十代の半ばからかれこれ50年。1日10分としても、足し算をすれば、途方もない時間をムダにしたとつくづく思う。
 
 最近は男でも、永久脱毛をするようになったらしい。
 髭ももちろんできる。一度施術してしまえば、もう2度と髭剃りをしなくていいってことか?
 今自分が、20代だったらなあ! 空費した時間を、取り戻すことができるのに。

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 別に今からでも、間に合うだろうって? 
 冗談じゃない。

 60歳越えたら、あと何年生きられるか、の世界になる。
 脱毛代に30万円使って、90歳まで生きればまあよしとするが、5年10年でくたばってしまっては元が取れない

 そう考えると、新しく何かに出費するという、選択肢はなくなるのだ。

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 同じことだが、電気屋に白熱電球の交換に行くと、しきりにLEDにしろと勧められる。
 確かに値段は10倍近いが、寿命は40倍だから、結局こちらの方がお得だというわけだ。

 おいおい、60代の自分に、40年後を考えろと言うのか。今日明日にもぽっくりいっちまったら、丸損じゃあないか――と心の中でツッコミながら、ふと気が付いた。
 そうか、この店員は、別に長生きのことを言っているんじゃないんだ。
 残念ながらお客様ご自身が亡くなられたあとも、跡継ぎの方がいらっしゃるでしょう。きっとお孫さんか何かが、そのまま今の持ち家にお住まいになって、LEDの恩恵を受けるでしょうと。

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 あくまでもそういう平均的な、標準的な客層をイメージしながら、接客をしているわけだ。

 ところがどっこい、こっちは子供や孫どころか、女房だっていやしない。
 年寄なだけでなく貧乏で、今では身寄りもない。「ぼっち」の負け組なのだ。

 そのうえもし持ち家でなく、四畳半のアパート住まいだとしたら、一体200円の白熱電球の代わりに2000円のLEDを買うことに、一体何のメリットがあるのだろう?

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 報道によれば、あと4年以内で、蛍光灯の製造が禁止になるそうだ。(注)
 そうなればLED転換は、もはやオプションではない。必須になるわけだ。

 それに切り替えるとなったら、電球だけではない。大元の照明器具も、買い替えなきゃならないんだろ? 2000円だけでは、すまないわけだ。
 いったいいくら、出費がかさむんだ? まだまだ十分使えるのに。

 まるで、困窮者切り捨てじゃあないか。
 そんな事態になるのなら、費用は国が負担してくれるんだろうな? 全国の負け犬のために、ちゃんと補助金配ってくれるんだろうね、岸田クン。

 そんなこともできないなら、日本中の同志に呼びかけて、お前の支持率下げてやるからな。
 まあ、もうほとんど、下がる余地なんかないんだけどね(笑)

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