「ベーシックインカム」という言葉をご存じだろうか。
国家がすべての国民に基本的な（ベーシック）収入（インカム）を保証する。実際に、相当額を支給するのだ。
おおざっぱなイメージで言えば、たとえば月１５万円というような金額を、国民一人一人に紐づけられた銀行口座に、自動的に振り込むのだ。
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一見生活保護にも似ているが、すべての国民に無条件にばらまくのだ。
そこではもちろん、不正受給はない。役所の窓口で職員が、気の弱そうな申請者にいちゃもんを付けては出し渋る――そんなおなじみの光景も、すっかりなくなるのだ。
当然生活保護は廃止され、重複することはない。
そればかりか、ベーシックインカムは、すべてのセーフティネットを代替する。
失業保険も、当然不要になる。
そして老後に備える年金も。もちろん、すでに加入者が払った掛け金は、十分考慮しなくてはならない。ただ新たな加入を止めることで、段階的に消滅していく。
新型コロナがらみの給付金が、巻き起こした大混乱は記憶に新しい。
持続化給付金などは、ばれているものだけでも、総額12億円近い受給詐欺があった。その逆に、給付金が手にできないで泣き寝入りしている人も、大勢いるというではないか。
そんなドタバタは、ベーシックインカムを導入することで、一瞬にして解決してしまう。
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こういう提言をすれば必ず、財源はどうするんだ、という反論が出る。
当然、増税である。
給与であれなんであれ、十分な所得がある国民からの税金で、財源をまかなうのだ。
単純化したモデルで言うなら、年間１８０万のベーシックインカムを受給した国民は、翌年の所得税が１８０万増税される。したがって国の懐は少しも傷まないわけだ。
それでは何の意味もないではないか――物事の本質 が見えない人間は、きまってそんないちゃもんを付ける。
だが忘れてはならない。ベーシックインカムの趣旨は、あくまで混沌としたセーフティネットを整理すること。より公正で、運用しやすいものに変えることだ。
セイフティネットであるからには、大半の人々には――十分働けて十分な所得のある人々には、もちろん「何の意味もない」。
だがしかし不幸にもそうでない人々は、もともと所得税もほとんど課税されないわけだから、支給されたほぼ全額を、生活再建の資金に当てられる。
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ごくまれに、奇怪なことを言い出す人もいる。
働かなくてもベーシックインカムが保証されるなら、誰も働くなくなってしまう、と。
だがしかし、支給されるのはあくまで月々１５万円だけの、最低限の金額である。
最低限の暮らしができるからもう自分は働かない、というような気質の人間は、あったとしたもごくまれだ。たいていの人はより豊かな暮らしを望んで、あるいはあり余る暇を持て余さないためにも、仕事を続けるであろう。
その上、これからはAIの時代である。
現在人間の行っている仕事の大半は、AIロボットに取って代わられ、大量の失業が発生する。
人間たちはベーシックインカムを通じてAIに養ってもらいながら、より創造的な――あるいはより人間的な仕事だけに専念する。
そんな未来が来ることを、私は見据えているのですよ。
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