続・昭和天皇をヒトラーと同列に論じる  

 (話は前回から続く)
 昭和天皇をヒトラーと同列とする、ウクライナ政府のツイッターが物議をかもした。
 だが、――

     *

 今回のこの騒動の、もう一つの側面は、「上から目線」である。

 言うまでもなく、わが国もまた、自由主義世界の一員である。戦争中のウクライナに対して、武器供与こそできないが、多額の財政支援をしている。
 そんないわば、助けてもらっている身分でありながら、失礼な物言いではないか、という論法である。

 だがそうしてウクライナを、遠い西洋の片隅の、かわいそうな小国と考えるとき。
 日本はそんな弱者に、すかさず手を差し伸べる、人道大国だと思い上がるとき。
 私たちはある大切な本質を、見落としていることになる。

 すなわち本当は、ウクライナがわが国に「助けてもらっている」わけではない。
 わが国の方こそ、こそウクライナに「戦ってもらっている」。
 下に見られなければならないのは、むしろ私たちの方なのだ。

     * 

 それはそうだろう。

 もしウクライナが、こうしてロシアと戦い抜かず、あっさり屈してしまったとしたら、一体何が起こっていたか。
 すべてが悪しき前例となる。
 国際法は、容易に踏みにじられる。力さえあれば、弱小の国の領土は侵し放題だ。もはやそのあとは、覇権国家の意のままとなる。

 まずはここを先途と、中国が台湾を併合する。ここまでは、誰の目にも明らかだ。
 だが事態は、そこでとどまりはしない。
 中国は沖縄に手を伸ばす。琉球王国はかつての中国の朝貢国であり、それを日本の支配から開放するのは、大義が立つからだ。
 もしプーチンがそのときまで生きていれば、北海道だってあやしいものだ。もちろんそこにはいささかの大義もないが、ウクライナ支援への報復とでも言っておけば、何でもありなのだ。

 そんなことは荒唐無稽な想像だ、と感じるとしたら、それはあなたがお花畑の住民だからだ。
 アメリカに「ケツ持ち」をしてもらって、在日米軍と日米安保のおかげで、80年近く侵略も戦争も経験しないできた。
 そんな奇跡のような悪運が、これからもずっと続くと勘違いしている。憲法九条さえあれば平和でいられる、と信じている馬鹿もいる。

 トランプの唱えた「アメリカ第一主義」は、米国民の支持を得た。それ以来アメリカは徐々に、日本防衛から手を引き始めた。
 あまつさえ、次の大統領選でトランプが勝利したらどうなるか?
 中国に対しては、少しは対抗心を見せるかもしれない。だがロシアに対しては、そうではない。
 プーチンにすっかり弱みを握られたトランプは(注)、北海道防衛にきっと手を貸そうとはしない。

(注)
 大統領就任以前、トランプはモスクワのホテルで、複数の売春婦相手に変態プレーを行った。(参考)
 その逐一がロシア政府によって隠し撮りされており、弱みを握られたトランプは、いつでも最後にはプーチンの言いなりになるしかない。
 好きなように操れるトランプを、プーチンは大統領にしたい。
 ロシアがアメリカの大統領選挙のたびに、介入を繰り返しているのは、それゆえである。

     *

 そんな恐ろしい事態を招かないためにも、ウクライナには絶対に、負けてもらっては困るのだ。

 ウクライナこそ自由民主主義と、国際法主義の最後の砦だ。
 覇権独裁国家に、悪行を思いとどまらせる、これが最後のチャンスなのだ。
 それがわかっているからこそ、西欧の諸国は多大な犠牲を払って、軍事・財政の支援を行っているわけだ。

 けっして「かわいそうだから、助けてやっている」のではない。
 その逆に自分たちのために、自分たちの代わりに・・・・・・・・・、彼らにこそ命を賭して「戦ってもらっている」のだ。

 わが国の場合も、事情は変わらない。
 だとしたら。
 例によって血は流さずに、いささかばかりの金だけをかけて、安逸をむさぼろうとする卑怯な国民を――日本人を、上から目線で語る資格があるのは、むしろウクライナの人々の方なのだ。

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