先日ある小児科医のツイートが、物議をかもした。
何でも2歳になる娘を、男湯に連れて行ったときのこと。お風呂の水面から、明らかに娘の裸を見つめる、ただならぬ視線を感じたというのだ。(参考)
そうして小児性被害に警鐘を鳴らしたあと、問題提起のためか、こう付け加えた。
「混浴可能年齢は場所によって個別に定められていて、中には11歳までを可能としている都道府県もある」
これを聞いて、ネットが騒然となった。
まずは「ロリコンおたく」みたいな連中が、11歳の女の子の裸が見れると、栃木県の銭湯に殺到したらしい(笑)
ほぼ同時に、正論屋の女性陣が噛みついた。
けしからん、性被害の餌食じゃないか。即刻可能年齢を引き下げよ、と。
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だがどうやらこの「11歳」というのは、2016年ころの書き込みがソースになった、誤情報らしい。
その後に、「おおむね7歳以上の男女を混浴させないこと」という、国の指針が通知された。都道府県の条例もそれに合わせて、次第に改定されていったようだ。
ネットの情報なんてものは、そうして日々更新され、古くなっていくものだから注意が必要だ。
書き込みを信じ込んで、必死に栃木に駆けつけたロリコンのみなさん、ご愁傷さま(笑)
それ以前に、そもそもこの条例は「男の子が女湯に入る(連れていかれる」ケースを、想定したものなんじゃないかな。
それを「女の子を男湯に連れていく」場合に当てはめて議論するから、わけがわからなくなる。
そればかりではない。彼らの言動には、ある重大な論理的な誤謬が含まれているのだ。
それはそうだろう。
当然のことながら、「混浴が可能である」というのは、「混浴しなければならない」とは違う。
可能であろうがなかろうが、本人たちにそのつもりがなければ、する必要はない。というよりも、たぶん尋常の人間は、そんなことはしやしないのだ。
混浴可能な栃木県でも、普通は小学5年生と、混浴なんかしていない。つまりはたとえ2016年でも、目当ての裸はいくら探しても、見つかりはしなかったのだ。
同じように、正論屋の女史たちの抗議も、理にかなわない。
混浴がいやなら、入らなければいい。行かなければいい。ただそれだけの話なのだ。
それにもかかわらず、可能年齢が高すぎると吠えるのは、見当外れもはなはだしいだろう。
本人がいやがっても、親が無理やり連れていく場合がある?
だとしたらそれは、DVの問題だろう。別に銭湯条例に非があるとは、到底思われない。
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「公然わいせつ罪」というのがある。不特定多数の前で陰部などを露出すれば、わいせつ行為として咎められるのである。
だがこの場合の「陰部」の定義は、一体何なのか?
赤ちゃんが公園の芝生に、全裸で寝そべったとしても、犯罪と思う者はいまい。
では何歳の陰部からが、わいせつ物と見なされるのか?
もし小学生の女の子が十分に大人で、その裸体がわいせつであるというのなら、男湯に連れて行った親こそ、公然わいせつに問われるべきなのだ。
混浴可能年齢なるものも、この観点から論じられるべきだと思うのだが、いかがなものであろうか。
こういう騒ぎが起きると、すぐにロリコンおやじはけしからん、気持ち悪い、みたいな論調になる。だけどそもそも、本当にそうだったのか?
湯船の中の凝視は、別にむらむらしてたわけじゃない。おいおい、いいのかよと、呆気にとられていただけなのではないか。
あるいは、あまり見慣れぬ物を前にして、目が点になっていたのかもしれない。
万が一父親の主張通り、彼らの視線が卑猥なものであったとしても。
だとしたらそんな劣情を刺激するような、いわばわいせつ物を男湯に持ち込んだ、父親本人に非があったのである。
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別に助平おやじをかばうつもりはないが、父親の主張にはかなり無理がある。
たまたま連れて行った銭湯だけに、たまたまその手の人物がそろっていた、なんて奇跡は普通はありえない。
つまりはもし父親の言う通りだとすれば、世の中の男どもはロリコンだらけ、ということになってしまう。
さすがに、そこまではないだろう。
自分の場合で言うなら、 小学生によからぬ気持ちを抱いたことなど、これまでにただの一度だってない。
中学生ならいざ知らず(笑)、これからだって、そんなことはないにちがいない。
まあ自分もけっこうな変わり者なので、余人の頭の中がどうなっているのかなんて、実際よくはわからないんだけれども。――
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