9月29日、杉田水脈が自民党の環境部会の、会長代理に起用された。(注)
杉田と言えばつい先日、アイヌ民族に関するTwitter上の投稿について、札幌法制局から「人権侵犯」と認定されたばかりである。
また過去に遡れば、LGBTについての差別発言について、総務政務官を更迭された経緯もある。
ちなみにかつてLGBTを「見るのも嫌だ」と発言して、総理秘書官解を任された荒井勝喜元(注)も、今ではもう大臣官房審議官として、シラーっと幹部に返り咲いている。
そんな問題の人物たちを、またあっさり役職に就けてしまうなんて、自民党はどれだけ寛大なんだ?――もしそう思われた人がいたら、世の中の仕組みを、もう少しよく勉強した方がいい。
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北朝鮮がミサイルを撃ちまくる。核兵器製造に邁進する。アメリカを口汚くののしる。
国際世論は当然、怒り沸騰だ。
だがロシアと中国は、けっして非難決議に加わらない。いつも知らん顔である。
理由はもちろん、おわかりだろう。彼らもまた、北朝鮮と同類だからだ。
人権無視の独裁政治、自由主義諸国への敵愾心。どれをとっても、北朝鮮は彼らの瓜二つの、いわばひな形のような存在だ。
大国の品位というものがあるから、ロシアと中国が表立っては言い出せない真意を、代わりに北朝鮮がわめいてくれる。
アメリカに噛みつき、核で威嚇してくれる。
金正恩はその乱行によって、中露の本音を代行してくれているわけだ。
だとしたらもちろん、非難などするわけもない。
むしろ喝采を送り、もっとやれ、もっとやれと心中では焚きつけている。
いわば自分の若いころに、そっくりなやんちゃな息子を、ただ微笑ましく見守っている状態なのだ。
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もうおわかりだろう。
つまりは杉田水脈もまた、自民党にとっては、そのような存在なのだ。
中露にとっての、北朝鮮のように。
言いたくてもなかなか言えない本音を、臆面もなく代弁してくれる、便利な暴言装置として機能している。
この6月に「LGBT理解増進法」が成立したが、もちろん自民党みずからが、望んでのものではない。
国内外の世論に負けて。ラーム・エマニュエル米駐日大使を経由した、外圧に押し切られて。
G7の議長国として、まさか人権後進国と思われてはいけない。ただその体面を保つためにいやいや、無理やり可決した法案なのだ。
法案を通すために、原案の文言は修正され、実質骨抜きにされた。
それでも採決に反対した一部の議員が、退席して抗議したくらいなのである。
それはそうだろう。
自民党を貫いているのは、戦前の日本への、復古主義だ。
天皇を頂点に戴いた、純血の大和民族。産めよ増やせよの、家父長的家族形態への郷愁だ。
もちろんそこに、LGBTの入り込む余地なんてない。アイヌ民族だって、知ったこっちゃあないのである。
「そんなもの気持ち悪い。見るのも嫌だ」というのは、実は彼ら全員の本音なのだ。
もちろんそんなことを口にすれば、袋叩きにあうのはわかりきっている。まっとうな政治的感覚がある人間なら、口が裂けても言いはしない。
そしてもし杉田のように、あえてそんな発言をする者があれば、きつくたしなめて、いったんは更迭をする。
だがしかし、政治生命を完全に断つような措置だけは、けっして取らない。もしそんなことをすれば、保守派の面々から、総スカンを食ってしまうだろう。
時期を見て、しっかり役職に復帰させることで。
この間のあの叱責は、あくまで世間向けのポーズです。形式を取り繕っただけです。
私の本音はあなたがた保守派と同じです、と最終的には杉田を、かばって見せるわけだ。
杉田本人だって、そのことがわかっているから、いつまでも問題発言をやめやしない。
それどころではない。自分に期待されている、暴言装置としての役割をよく理解して。
そのつとめをただ忠実に、永遠にはたし続けていくだけなのだ。――
(話は次回に続く)
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