人を殺したのはいいが、みんな遺体の処理に困る。
それであれこれと、知恵を絞る。
風呂場でバラバラにして、トイレに流してしまえばいいが、ときどき下水槽の点検みたいのがあって、バレちゃうこともあるらしい。
そこで化学の知識の出番だ(笑)
人間の体はタンパク質でできているから、酸やアルカリで溶ける。
なんでも業務用のパイプクリーナーというのがあって、水酸化ナトリウム濃度が95%だそうだ。こいつをぶっ掛けて、ついでに煮込んでしまえば、肉はほとんど溶けてしまう。
もっとも骨はカルシウムだから、アルカリでは溶けない。こちらは塩酸で溶かす。「サンポール」で構わない。
まあ、それでも溶けづらかったら、焼いて砕いちゃえばいいだけの話だ。
そうやって処理したあとで、残滓をトイレに流せば、証拠は残らない。
ただし歯にインプラント(チタン)とかしていると、溶けないで残るから注意してね。
地面に埋めるとか、ちゃんと分別して対処しないとね。
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以上がネットの、書き込みのまとめだ。
みんないろいろと、よく考えているんだね。
でも自分に言わせれば、馬鹿だと思うよ。何でそんな、面倒くさいことするんだろう。
遺体なんて、食べちゃえばいいだけの話なのにね。
もちろん、いっぺんには食べ切れないよ。
切断したあと、大きめの冷凍庫に、小分けにして保存する。
それから毎日少しずつ、焼き肉を食べればいいんだよ。
骨だって、焼いてせんべいにすれば食べられる。「骨噛み」(注)と言って、遺骨を食べる風習だってあるんだよ。
そうすれば、薬品なんていちいち、調達しなくていい。サンポールも買わなくてすむ。
食費もずいぶん、浮かすことができる。
化学というよりバイオの力を借りて、ウンチに変える。ウンチにしてトイレに流すわけだから、絶対に足がつくこともないわけだ。
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けっして、あやしまれることもない。――
だが肝心なのは、その先だ。
万が一、奇跡のような偶然によって、犯行が発覚するようなことがあったとしても、心配ない。
このやり方なら、罪に問われることはないんだ。
この世の中、人を殺せばもちろん死刑になるが、遺体を食べてしまえば無罪放免になる。
「精神鑑定」ってやつがあるからね。
人間の肉を食べるなんて、正常な人間ができるはずがない。だから心の病で、責任能力なし、となるわけだ。
あれ? 知らなかった? お若い方は、ご存じないんだ。
もう40年以上前になるからね。
その昔「佐川一政」(注)という人物が、「パリ人肉事件」(注)を起こした。
要するに、殺した女の遺体を食べちゃったわけだが、精神鑑定のすてきなシステムのおかげて、ちゃっかりお咎めなしとなった。
死刑どころかすっかりマスコミの寵児となって、俺たちなんかよりずっと、おもしろおかしい人生を送ったらしいよ。
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そう。殺した死体は食べちゃえいい。そうすれば、必ず罪を免れる。
たとえ一時捕まったとしても、結局無罪放免となる。
そこがこのやり方の、一番すばらしいところさ。
耳寄りなお役立ち情報なので、よーく覚えておこうね。――
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