キリスト教の聖書によれば、初めに造られた人間は、アダムとイブだという。その後のすべての人類は、彼ら二人の子孫なのだ。
だが、ちょっと待てよ。
まずその二人の「婚姻」によって、子が生まれる。
そこまでは、それでいい。
だがその次の、孫の世代は、一体どうやって生まれたのだろう?
近親相姦である。何しろその段階でこの世にいるのは、アダム夫婦と、その子供たちだけなのである。
どれをどう組み合わせたって、親子でやったか、兄妹同志でやったかしかない。
*
しかもそれは、人間たちばかりではないのだ。
同じく聖書によれば、あの例の「ノアの方舟」には、すべての動物のつがいが一組ずつ乗せられた。それがその後の動物たちの、祖となったわけだ。
だが、ちょっと待てよ。
まずそのつがいから、子が生まれる。だがこれもまた、その次の世代は、――
つまりは私たち人類を含めて、地球上のあらゆる動物たちは、近親相姦の子孫だということになるのだ。
「性」には厳格なはずの彼らが、そんな聖書の記述の、矛盾に気づいていないのか?
それともまさかとは思うが、あくまでもひそやかに、その教えを実践しているとでも?……
彼らの生態は、いよいよもって謎である。――
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と、ここまで書いてみた。
もちろん、ただの冗談だ。つまらない戯文である。
論理的にはこういうことに、なってしまうんじゃないの、とちょっと指摘してみたかっただけなのだ。
こんなこと西洋人には、絶対内緒にしてね。神への冒涜だ、とか言って、暗殺られてしまうといけないから。
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さらに追記。
これはあくまで、後になって知ったことだが、ヘブライ聖書の一つの『ヨベル書』には、
「(アダムとイブの)長男カインは、長女アワンと婚姻した。三男セトは次女アズラと婚姻した」 と、しっかり書かれているそうだ。
してみると兄妹のことは、閨の秘密でも何でもなく、堂々と公言されていたわけだ。
あらまあ、ずいぶんと大胆ですこと。――
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