1984年にマドンナの「ライク・ア・バージン(like a virgin)」がリリースされ、全米のみならず全世界で大ヒットを記録した。
後にマドンナを「史上最も成功した女性アーティスト」の地位に押し上げる、原動力となったのもこの曲である。
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ちょっと英語のおさらいをしておこう。
He likes his father.
はもちろん、「彼はおとうさんが好きだ」だ。一方、
He is like his father.
は?――「彼はおとうさん似だ」となる。
like~には「~に似ている」「~のようだ/ように」という用法がある。動詞ではなく、まるで前置詞のように、後ろに名詞を従えて用いる。
She acted like a boy.
は、「彼女はまるで男の子のようにふるまった」。女の子のくせに勇敢だった、と思い切りジェンダーバイアスな表現となる。
さて、応用問題です。
He acted like a boy.
は? もし「彼」が、小学生ぐらいの子だったとすると?
正解は「男の子らしくふるまった」。
当人が実際そうであれば「~らしく」。そうでなければ「~のように」と、訳し分ける必要がある。
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それでは例の、マドンナの場合はどうなのだろう。
like a virgin――処女が好き?
それではマドンナにそっちの気(け)があって、なおかつロリコンだ、ということになってしまう。それとも、吸血鬼だったのかもしれない(笑)
文脈的にも無理があるが、そもそもいきなり動詞から始まるというのは、命令文でもないかぎり、たとえ曲のタイトルといえども尋常ではない。
普通の状況では、そういう読み方はしないのである。
「処女らしく」?――あんな処女がいるわけはないから(笑)、この解釈もなしだろう。
だとしたらもちろん、正解は「処女のように」だ。
日本語でも「乙女のように恥じらう」とか言うだろう。きっとそんな感じだ。
ワタシのような、さんざんヤリまくった後の女でも(笑)、あなたの前にいるときだけは、胸が高鳴ります。
まるで乙女のような、恥じらいさえ感じますと、あの顔で(笑)殊勝なことを歌っているわけだ。――
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Like A Virgin――40年前とはいえ、大ヒット曲だから、今でも話題になることもあるかもしれない。
そんなとき「私も処女が好きです」などといらぬコメントして、思わぬ墓穴を掘らないようにしたい。
エロいことばかり考えていないで、しっかり勉強もしておこう。
こうしてあらかじめ、無料で英語の授業が受けられたことを、つくづく神に感謝しなくてはならない(笑)
以上、英語おもしろ雑学でした。
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<蛇足>
結婚式場の招待客たちが、花嫁にツッコミを入れている心の中の声。
――オメエがバージンロード歩くなよ。穴あき銭じゃあねえか。……
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