AIのおかげでアソコが見れました<アダルトビデオ編>

 AIは何でもやってのける、というのでその能力が話題になる。

 その中でも、あまり表立っては語られないのが、性の分野での活躍である。

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 少し前で言うと、「デイープフェイクポルノ」(注)というのが話題になった。

 準備するものは二つ。
 一つはお気に入りの女の子の写真(画像)である。それはもちろん、人気の女優やアイドルでも、自分の初恋の娘でもかまわない。
 もう一つは、作成のベースになるポルノ動画である。
 その二つさえ提出すれば、あとは全部AIがやってくれる。

 まずはAIが、お気に入りの顔写真のデータを読み込んで、その特徴を解析する。
 そのデータを、動画のものと融合する。要するにポルノ女優の首から上を、娘の顔に置き換えて合成するのだ。
 その結果、初恋のあの娘の夢にまで見たハードシーンが、目の前に映し出されるという仕組みだ。

 その昔「アイコラ(=アイドルのコラージュ)」と呼ばれるものがあった。
 アイドルのピンナップの首から上を切り取って、手持ちのヌード写真の頭部に張り付つける。
 そうすることで「清純派アイドルの奇跡の初ヌード」が、拝めるというものだ。

 原理はそれとまったく同じだが、AIの方ははるかにレベルが高い。
 こちらはしょぼい、画像一枚とかではない。120分まるまるの動画である。
 そしてもちろん、不自然な切り貼りの痕跡など、まちがっても残ってはいない(笑)

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 新手では「モザイク破壊版AV」というのがある。
 通常に売られているアダルトビデオの、モザイク部分をAIが除去したものが、ひそかにネットで販売されているわけだ。

 厳密には「除去」しているわけではない。周辺の画像や、モザイクのパターンをAIが分析する。そうすることで、その向こうにあるはずのものを、推測して再現しているのだ。
 けっしてそのものずばりの、鮮明な映像が見えるわけではない。
 それでも明らかに、「それらしきもの」は映っているので、興奮しようと思えば確かにできなくもない(笑)

 やっばりこれくらいまでが、現段階のAIの限界なのか。
 もつとずっと人類のテクノロジーが進歩して、本物の景色を見せてくれる。そんな日が訪れることを、ひそかに期待する向きも多いらしい(笑)
 それでもずっとモザイクに悩まされてきた世代にとっては、こうして概形だけでも覗くことができれば、 随喜の涙にちがいないのだ。――

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 だがしかし知人の一人は、こんなふうにうそぶいている。
 別段AIの助けを借りなくても、自分にはモザイクの向こうが見える。
 それは一種の通力のようなもので、じっと目を凝らすことで、それまでは視界をさえぎっていた邪魔者が雲散霧消する。
 そのうえ念力は、AV鑑賞の場合にかぎらない。道行く女性たちの衣服の下も、その向こうの下着のあちら側さえ、見通すことができると言うのだ。

 もちろん周囲の人間は、そんなのはただのスケベの妄想だと笑う。だが知人ときたら、頑として聞こうとしない。
「性器の形が瞼の裏にはっきりと焼き付く」「それぞれがそれぞれの形をしていた」と言い張るのだ。
 それどころか、透視のできない普通の連中を、修行が足りないと見下している。

 ところがそんな知人も、どういうわけか破壊版AVを重宝している。
 理由はこうだ。
 なるほど自分の念力だけでも、モザイクを除去することはできる。
 だがそのためには、超人的なパワーを使うから、五分もするともうくたくたになる。せっかくのエロい気分も、ふっ飛んでしまうのだ。
 超能力を駆使しながら、なおかつ卑猥な気分でいられるというのは、なかなかの難事らしい。モザイク破壊版を購入してしまった方が、はるかに楽ちんなのだ。

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 知人の例は、とても参考になる。

 エロビデオの場合だけではない。AIだけに、かぎった話でもない。
 つまりはあらゆるテクノロジーは、実は人間にない能力を、具現する奇跡ではない。
 むしろ人間にもにすで備わっている能力を、容易に代行してくれるものなのだ。 

 徒歩で東海道を踏破することだって、もちろんできたのだ。ただ車で行ったほうがお手軽だ。新幹線で行けばその方が速い、というだけだ。
 いわばそれまで、人間がシコシコと頑張っていたことを、あっさりやってのける。
 それが科学技術というものだ。

 AIであれ何であれ、テクノロジーというものはそういうものだ。
――そんな物事の本質を教えてくれる 有益なエピソードだと思ったのだが、いかかなものであろうか。

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