アメリカの歴代大統領で、最高の支持率を叩き出したのは誰か。
何とジョージ・W・ブッシュ(子)だ。
もちろん、瞬間最大風速である。2001年9月11日の同時多発テロ事件を受け、「テロとの戦い」を標榜した直後、それまで50%だった支持率が91%に跳ね上がった。
もっともその後は数字が下がり続け、7年後には25%を割り込んだ。史上もっとも不人気な大統領として、その評価を不動のものとしたのである(笑)
思えばその父ジョージ・W・H・ブッシュもまた、1991年の湾岸戦争時、当時としては歴代最高の支持率(89%)を記録していた。
何が言いたいか、おわかりだろう。
すわ、開戦か、という事態になれば支持率は必ず暴騰する。
それはそうだろう。祖国の危急存亡を前にして、不満など言っている場合ではない。
とりあえずは今、目の前の指導者のもとで、一致団結して事に当たるしかない――そういう気分が国民全体を支配するわけだ。
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さてそこで、われらが高市早苗の登場である。
高市内閣は発足以来、高支持率を維持してきた。
国民生活が順調なときには、みんな安定を望む。だがこうしてすべてがどん詰まりになると、ひたすら変化が熱望される。
どっちつかずの政治家は、見向きもされない。過激な現状打破をぽんぽん打ち出す高市が、支持を集めたわけだ。
それが良い変化なのか、悪い変化なのか、国民には判断はつかない。だがこのままでは埒が明かない以上、丁半博打に賭けるしかない、というわけだ。
そこに日中対立が加わる。関係は悪化の一途をたどり、ネットでは開戦前夜のような言説が飛び交う。
そうなると、指導者の支持率はますます跳ね上がる。最新の調査で72.5%という数字を見たが、おそらくそれではとどまらない。戦時ムードが高まれば、90%も夢ではない。
だから高市は、ツッパリ続ける。
消息筋によると、明けて一月には解散総選挙に打って出る。そのときまでに人心を煽るだけ煽って、自民党大勝に持ち込む魂胆なのだ。
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下級国民には、国際政治と「ニッポン・チャチャチャ」の区別がつかない。
このあいだ、大谷翔平と山本由伸が世界一になった。こんなに優秀な、われら大和民族に向かって、中国ごときが上から目線なのは許せない。
駐大阪総領事の暴言(注)は、サッカー北朝鮮代表団のグーパンチ(注)と変わらない。何と品性の卑しい国民だろう、と怒り心頭なわけだ。
だから習近平が、高飛車に出れば出るほど。高市がそれを、いさましく撥ねつければ撥ねつけるほど。
みんなでやんやと喝采し「盛り上がって」いるわけだ。
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だがもちろん、現実はスポーツとは違う。
国際政治は冷厳である。日本のような小国が問題をこじらせれば、軍事的にも経済的にも死活問題となる。
高市早苗だって、たぶん馬鹿ではない。選挙が終われば現実主義に立ち返るだろう。
中国と手打ちをする。ひょっとしたら、習近平の軍艦の上でピョンピョンするかもしれない。(注)
そのときには、パブリック・ビューイングの前で拳を振り上げてワメいていたファンは、すっかり肩透かしを食う。中にはあからさまに、失望する者もいるかもしれない。
だがそれで、構わないのだ。もう当分選挙なんかない。下級国民の連中は、もうとっくに用済みなのだ。
盤石の絶対安定多数を確保した高市は、それから四年間、なつかしの安倍晋三のときのように、やりたい放題ができるというわけさ。――
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