ふるさと納税は金持ちの脱税装置  

 「ふるさと納税」というものがある。
 本来原住地で納めるはずの住民税の、一部を生まれ故郷の自治体に、納税するのである。

 自分を生み育ててくれたふるさとを、感謝を込めて応援する、というのがその趣旨であった。
 だがその後、「ふるさと」の意味が拡大解釈された。
 出生地以外でも、全国のどの自治体でも選べるように、改変されたのである。

 その結果、激しい誘致合戦が始まった。「返礼品」である。
 わが町に納税していただければ、お礼の品をお送りします。肉やら、酒やら、家電やら、旅行券やら。……
 名目は感謝のしるしだが、実態はキックバックに他ならない。たとえば納税額の8割が、金品の形で戻ってくるわけだから、金持ちたちの節税(=脱税)の、格好の手口になったわけだ。
 「返礼品人気ランキング」のようなサイトとにらめっこして、より還流率の高い自治体を探す。それを複数組み合わせていけば、100万円分くらいはゆうに脱税できるのだ。

 さすがにこれはまずい、やりすぎだ、ということになって、2019年からは「返礼品は納税額の3割以下の市場価値のもの」という規制ができた。
 だが裏を返せば、3割以内の脱税はお墨付きをもらったわけだから、あとはやりたい放題である。

 ふるさとを応援するとか言いながら、3割が戻ってくるのなら、応援も7掛けになってしまう。
 感謝の気持ちを示すなら、礼状一本送ればすむはずだ。
 本来なら、金銭的価値のある返礼品は、完全に禁止すべきなのだ。それをしないのは、ただただ節税志向の金持ちたちの、意を迎えるためなのだ。

     *

 この制度では、貧乏人はお呼びでない。 
 低所得者は、そもそも納税額が少ないから、節税できる金額も取るに足らない。そこへ持ってきて、手数料みたいなものもさっ引かれるから、手元にはいくらも残りはしない。

 複雑なシステムを勉強して、いくつもの書類を作成する手間を考えたら、数千円の節税ではとても利用する気は起こらない。 
 たがしかし、金持ちたちはそうではない。同じ手間を掛けても百万単位で節税できるなら、殺到するのも当然だろう。

 自分には一人、兄貴がいる。
 頭が悪いくせに、悪運だけは強いので、今ではそこそこの小金持ちをしている。
 こいつの場合、かつてはふるさと納税で、50万円節税できたそうだ。
 それが今度の3割規制のおかげで、20万にしかならないと、ぶーたれている。

 おいおい。20万と言えば、困窮世帯が食うや食わずで働いて、やっと手にする金額だぞ。
 それを小手先の操作だけで稼いでおいて、不満たらたらとは、何様のつもりなんだ。
 身内ながら、死んでほしいつくづくと思う。

     *

 もちろん制度の欺瞞に、気づいている者は多い。だがお偉方は、けっして声を上げられない。
 何しろ、ふるさと納税の生みの親は、かの菅義偉氏だからだ。

 総務相時代の氏が創設したふるさと納税は、その後の氏の出世とともに、いわば首相の肝いり案件となった。
 そうなればもう、誰も異を唱えることなど、できようはずもない。

 それはただの、忖度とは違う。
 実際に、制度の矛盾を指摘した官僚が、たちまち飛ばされた(左遷された)経緯がある。
 そんな仕打ちを見ているものだから、能吏たちは――そしておそらく政治家たちも、この問題に踏み込むことはできない。いわば不可侵の、聖域となったのだ。

     * 

 そうだった。それが菅義偉あいつの、いつものやり口なのだ。

 首相時代の政治手法を、思い出してみたまえ。
 どう見ても、王道政治とは程遠い。
 正面切った議論は、原稿棒読みの同語反復で、のらりくらりと受け流す。
 それだけなら、気の弱そうなおじさんで済ませられるが、その実裏に回ると一変する。
 「飛ばす」「干す」「締め上げる」。陰険な人事と恫喝で、権勢をふるうのだ。
 そんな表と裏の使い分けこそが、政治の要諦だと勘違いしている、村議会レベルの政治家である。

 容貌は、ご存じの通りだ。歴代の総理大臣の中でも、もっとも風采が上がらない。かのドブネズミ竹下登をも、簡単にしのいでしまった。
 たとえ薄毛の貧相でも、内側からにじみ出るものがあれば、印象は変わるのに、それがまったくない。
 人徳とも、高邁とも、知性ともおよそ縁がない。中身があれ・・だから、外見もあれ・・なのだ。
 これがわが国の総理大臣ですと、外国の知人に紹介するのが、恥ずかしくてならなかったのを覚えている。

 ようやくあいつが、表舞台から消えてくれたと思ったら、このごろ雲行きががあやしくなった。
 支持率ぼろぼろの、現岸田首相の後継として、再登板も噂されているというのだ。
 おいおい、冗談だろ。それだけは、勘弁してよ。
 もう少しましな後継候補が現れるまで、岸田氏がもう少し悪あがきを続けてくれないか、とすら思えてしまう。――

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