たとえば商品の名前を考えてみよう。
商品が売れるためには――高級であったり、効き目があるかのように思わせるためには、ネーミングに工夫がいる。
ありきたりの、見慣れすぎた単語を用いてはカッコよくも、オシャレにも響かない。
聞き古されていないもの。新鮮な、あるいは「異化」された表現をすることで、名乗りは呪術性を帯びる。「謎の呪文」のようである必要があるのだ。
てっとり早いのは、外国の言葉を用いることだ。
とりわけかつては、憧れだった西洋文明の語を借りた。
タバコの銘柄を考えてみるといい。昭和の時代に人気だったのは「ハイライト」「ホープ」「ピース」「セブンスター」だ。――
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――と、こんなことを言うと、誰もが笑い出す。
どこがオシャレだよ。どいつもこいつも、ダサい名前ばかりじゃないか、と。
だが勘違いしてはならない。上記の単語はそのどれもが、かつては進駐軍の兵士だけが口にする、ハイカラな西洋語だったのだ(笑)
だがその後、英語教育が浸透し、日常生活にも横文字が目立ち始める。
そうなるともはや、中学の単語テストで出題されるようなレベルの英語では、いささかの新鮮味もない。訴求力を失ったのだ。
代わりにもう少し上級レベルの、英語が選ばれる。あるいはフランス語やラテン語、挙げ句の果てにはどこにもないような造語をでっち上げたりする。
かくして「マイルドセブン」は「メビウス」に改名された。それでもタバコは相変わらずの名前が多いが、ファッションや嗜好品となると、舌を噛みそうなものばかりが並ぶ。
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ところが、である。
自分のように英語を職業とし、第二外国語もそれなりに頑張った者には、いかなる西洋語も陳腐に聞こえてしまう。どうしても使い古された、手垢のついたイメージが先に来る。
栄養ドリンクを差し出されても、「リゲイン」ではちっとも効く気がしない。
逆に「(ユンケル)黄帝液」の文字を見ると、おおっ、と思う。
漢字の羅列の方に、目新しい呪能を感じてしまうのだ。
そればかりではない。
不老長寿の薬を探し求めたという、かの国の皇帝たちの逸話も脳裏をよぎる。
だとしたら精力剤だって、さぞかし強烈なんだろうとつい思えてくる(笑)
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私事になるが、40代くらいまでは、よくユンケルのお世話になった。
CMキャラクターのせいもある。
最近ではイチロー以来、さわやかなスポーツドリンクで売っている。だが以前のCMはタモリであった。

若いころのタモリは、まだねっとりと油切っていた。そのサングラス姿は否応なく、どことなくいかがわしい雰囲気を醸し出した。
実際のCMのキャチコピーは忘れてしまったが、そんなタモリの存在そのものが、
「夜はこの一本でっせ」「あっちの方にも効きまっせ」
と無言のメッセージで、その「効能」を謳っていたのである(笑)――

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