<あれ? 車に傷が>
風俗店に客が車で乗りつける。
少し離れたところにある駐車場の場所を店に教わって、そこに停めに行ってからまた歩いて戻ってくる。――そんな面倒な手間を、上客にかけさせるわけにはいかない。
そこで店のボーイが代わりに車を停めてくる。それで客はそのまま悠然と、店内に入ることができる。
帰りにも鍵を預かっていたボーイが、ちょうど退店時間に合わせて車を取ってくるから、こちらも客を待たせるようなことはない。
高級店であればあるほど、そんな下にも置かないもてなしが必要なのだ。
――かつては確かに、そんな丁寧な接客が行われていた。
だがいつしか、このサービスを悪用する輩が現れた。
退店時にボーイの取ってきた車を見て、クレームをつけ始める。
こんなところに、傷がついているじゃないか。ボーイが運転したときに、どこかにぶつけてきたのだろう。どうしてくれる、と騒ぎ出すのだ。
もちろん、初めから傷物の車で来店したのだ。だが本当に小さな、目立たないくらいの傷なので、店は気づかなかった。
しかしそうして指摘されれば、確かに傷は存在する。どうせ最初からあったんだろう、詐欺だ、とわかっていても証拠もなしには決めつけられない。だから泣く泣く、要求通りに修理代を払う。
相手は当然、カタギではない。当時幅を利かせていたヤクザたちだ。ヤクザが風俗店から金をせしめる、常套の手段だったわけだ。
だがそんなことが度重なっては、経営が成り立たない。
というわけで、全店舗が申し合わせたように、この駐車サービスをやめてしまった。
今では風俗店に車で乗りつけた客は、少し離れたところにある駐車場の場所を店に教わって、自分でそこに停めに行ってからまた歩いて戻ってくる。――そんなコピペのような面倒な光景が、毎回繰り返されているわけだ(笑)
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