中居正広の性加害問題が、世間を騒がせている。
だがそのわりには、先だってのジャニー喜多川の件との関連は、すっかり見過ごされているようだ。
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「DVの連鎖」という言葉がある。
父親が母親に暴力を振るうのを見て育った息子は、将来結婚してから、自分も妻にDVを加えるようになる。
男は女を暴力で支配するという、無意識の刷り込みが行われるからである。
ましてや父親に暴力を振るわれた息子なら、なおさらである。長じて家庭を持った後に、妻子を殴りたいという衝動に駆られるのも、自然な成り行きだろう。
かつては「やられる」立場だった人間が、今度は「やれる」立場になった。そのときに、歪んだ復讐の願望が頭をもたげる。
対象は別の人物にすり替わっても、「やられたらやり返す」という本能の誘惑に、抗うのは容易なことではあるまい。
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この連鎖の原理は、もちろんDVばかりではない。あらゆる暴力について当てはまる。
当然のことながら、性加害もしかりである。
中居といえば、言わずと知れたジャニーズ事務所の出身である。
15歳の入所から33年間、あの「文化」の中に、どっぶりつかりながら育ったわけだ。
そこではジャニー喜多川が、少年たちを次々と手ごめにしていた。そんな姿を見聞きしながら、中居の頭の中にも忌まわしい刷り込みが行われた。
上に立つものは権力を笠に着て、いいように好餌を食らうことができる。そんな世間知を、学習しただろうことは想像に難くない。
否。「見聞きした」というのは、単なる婉曲表現だ。実際には中居本人も、その被害者だったのだ。
これについてはエビデンスはないが、論理的に明らかだろう。
何しろジャニー喜多川の要求を拒めば、デビューさせてもらえないシステムだったわけだから。今活躍している事務所のタレントは、全員が経験者だと推論して間違いないのだ。
そしてもし、そうだとしたら。
中居自身もジャニー喜多川の餌食であり、おもちゃであったとしたら。
今こうして逆の立場に立ったとき。かつては「やられる」立場だった人間が、今度は「やれる」立場になったとき。
中居があのような行動に打って出たのも、ごくごく自然の成り行きなのだ。――
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つまりは起きたことはげに恐ろしい、いわば「性加害の輪廻」とでもいうべきものだ。
仏教者に言わせれば、輪廻転生の苦しみから解脱するには、厳しい修行の道が必要だ。
並み大抵の人間には、容易になしうる業ではないのである。――
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