「paypay送金」が旭川の女子高生を殺した

 もう少しpaypay送金の使い勝手がよければ、少女が死ぬこともなかっただろう。

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 北海道の女子高生が、知り合いの四人組に殺される事件があった。(注)
 橋から川へ突き落とされ、溺死したという。

 事の経緯はこうだ。
(1)被害者の女子高生村山月(るな)さんが、内田梨瑚(りこ)容疑者の写真を無断でSNSに転載した。
(2)このことに因縁をつけて、内田が村山さんから金をゆすり取ろうとした。典型的な恐喝の手口である。

 だがこの後、悲劇に至るまでもうワンステップが入る。
(3)村山さんはトラブルの解決金として、内田に10万円を支払うを提案した。電子決済で送金を試みたが、うまくいかなかった。

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 つまりは村山さんは、金の支払いに同意していたのだ。内田もその金額で納得していた。
 ただ送金に失敗したために、腹を立てて殺害に及んだのだ。

「失敗」が何を意味するのかはわからない。不具合ということではなく、使い慣れていなかったために手順を間違えたのではないか。
 報道では「電子決済」とあるだけだが、どの決済も似たようなものだ。自分も paypay送金を初めて利用したときは、散々手こずったものだ。
 おそらくは村山さんは送れたと思い込んで、内田にそう報告した。だが実際には届いていないので、
「この野郎、嘘つきやがって」
と激高したのだと思う。

 つまりはもし、電子決済の使い勝手がもう少しよければ、村山さんは殺されなかった。いわばpaypay送金が、女子高生を殺したのだ。
 送金に成功していれば、内田が殺すこともなかった。殺人罪だから、容疑者4人が死刑になることもありうる。だとしたらpaypayの落ち度で、合計5組の若者が命を落とすことになるのだ。

 この点を、けっして見過ごしてはならない。電子決済のシステム設計は、断固断罪してしかるべきだ。――

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――というのは、もちろん滅茶苦茶な論法である。
 周辺的な、些末な事情にすぎないものを、取り上げて主犯扱いする。
 とんでもない言いがかりだ、と思うだろう。

 だがこれと同じような暴論を、かつて自分は聞いたことがある。
 2014年に「児童ポルノ禁止法」が改正され、その製作・販売のみならず、単純所持までが違法とされた。持っているだけで逮捕される、というわけだ。

 その理屈がこうだ。
 児童ポルノを見る人間がいるから、作る人間が出てくる。
 買うヤツがいるから、売るヤツが現れる。売るために、性加害を行う。
 だとしたら、買う側を取り締まれば、必然的に幼児への性虐待もなくなるだろうと。

 まるで「風か吹けば桶屋が儲かる」的な、無理やりな理屈である。
 ふつうは逆だろ。
 あるから買う。なければ買わない。売るヤツがいるから買うヤツが現れる。そう考えるのが正常な思考なはずだ。

 百歩譲って、もしそんな極論が成り立つとしたら。単純所持が犯罪だとしたら。
 だとしたら上述の「paypay送金主犯説」もまた、認められなくてはならない。――

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 否。
 両者は本当はまったく別の話で、違いがわからないのは、単に自分の頭が悪いだけなのか。

 それとも逆に、てっきり違うと思い込んでいる、おおかたの世間の人間の方がバカなのか。

 真相は永遠に、藪の中である。――

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