<脱税幇助>ふるさと納税返礼品の「創意工夫」

 他人ひとが誰もやらないことをやる。これを独創的と呼ぶ。――

 だがこの定義は間違っている。

 それはそうだろう。誰よりも多く人を殺した通り魔を、けっして独創的とは言わないだろう。

     *

 悪事かどうかが、問題なわけではない。

 人を殺すことなんて、誰でも思いつく。やろうと思えばできるけれども、それでは人倫にもとる。さすがにそれはまずいだろうと、やらずにいただけだ。――そんなことをいくらやったって、独創とは言えない。

 誰も思いつかないことを発案する。「誰もやらない」のではなく、「誰もやれない」ことをなす。それこそが鬼才であり、超人と呼びうるものだ。

     *

 例のいわくつきの「ふるさと納税」で、かつてこんなことがあった。
 ある自治体の長が、名案を思い付いた。
 どうせみんな金を浮かせるために、ふるさと納税を利用するんだ。それならいっそ、返礼品は商品券にしてしまえばいいと。
 案の定希望者が殺到したが、さすがに総務省が黙っていなかった。換金性の高いものは禁止とされて、お叱りをいただいた。

 ふるさと納税なんて、所詮は脱税のための抜け道である。(注)返礼品のやりとりを通して、富裕層に住民税の相当分をキックバックする。実に悪質な仕組みなのだ。
 だがあまりにもあけすけにやられて、下流国民たちにその本性がバレてしまっては、元も子もない。
 だからかつては天井知らずだった返礼品の額を、納税額の三割までと規制した。同じ流れで、商品券も反則としたのだ。

 言いだしっぺの首長が、お上に抗議の声を上げた。その言がふるっている。
――地方の創意工夫を、中央がつぶす気か! 分権の理想はどこへ行った!
 とのたまったのだ。
 ただただ、笑ってしまう。

 何が「創意工夫」なものか。
 返礼品を金券にするなんて、誰にでも思いつく。何なら現金を返してしまえば、もっと人気が出るだろう。
 だがそれでは道理に反するので、さすがにはばかられる。
 みんなわかっていたけれども、不正義なのでやらなかっただけだ。できたけれども、やらなかった。
 それをどこかの厚顔無恥な首長が、あえて着手したとしても。それは 「創意工夫」などではない。ただの「破廉恥」にすぎない。

     *

 似たような勘違いは、枚挙にいとまがない。
 たとえば売れ残った食品の、賞味期限を書き換える。産地を偽装する。
 そんな不逞の輩が、しばしばこんなポーズを取って見せる。

 人差し指の先を側頭部に押し当てる。それにチョンチョンと、つつく動作も加わる。
 わが国ではそれは「頭を使えよ、頭を」を意味する、ボディランゲージなのだ。
 あるいは「どうだい。俺って頭いいだろう?」「オツムの出来が違うよ。お前らとは」とも読める。

 要するに天才的なアイデアを思いついた、自分の商才に得意満面なのだ。 
 お笑い種だ。あまりにも片腹痛い、履き違えである。
 そういうことは創意工夫とは言わない。ただのちょろまかしである。
 頭がいいのではない。きっとその逆なのだ。

 確かに、本当に頭のいいやつが、こんな仕草をしたのを見たことはない。
 見ようによっては「私はバカです」のポーズに、見えないこともない。
 つまりはあいつらはまた違った意味で、文字通り「オツムの出来が違う」連中なのである(笑)――

コメント

  1. 惚け🍆 より:

    帝王様、初めまして
    通りすがりの者でございます
    イキナリですが
    ススキノ殺人事件どう思われますか
    コレもアナタの仰る
    誰もヤレナイ独創的なものなのでしょうか
    ロンパ~してみて下さい

  2. 通りすがり より:

    鬼塚様はじめまして
    ワタシは暇人です
    アナタのオモシロいブログが目に留まり
    突然のコメントをさせて頂きました
    ススキノ殺人事件はある意味独創的で
    誰でもはヤレナイ行為と思うのですが
    如何でしょう

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