40年前、まだ教壇に立ったばかりのころ、とんでもない誤答をやらかした。
中学2年の英語の問題集で、
What is the first day of the week?
と問われた。
ふつうにMonday と答えたが、模範解答はSunday だったのだ。
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職員室に帰って、講師仲間をつかまえて愚痴をこぼした。カレンダーは月曜日で始まっているのに、おかしいじゃないかと。
同僚は笑って言った。
「それは競馬カレンダーだろう」
図星であった。そのころ自宅の部屋に貼っていたのは、中央競馬会の、無料配布のカレンダーだった。同僚は自分が、競馬に熱心なのを知っていたのだ。
ご存じのように、競馬は土曜と日曜の連続開催である。開催日を見やすくするように、月曜始まりにして、土日を行末にまとめているというわけだ。
ほら、あれを見てみろよ。と同僚は職員室の壁のカレンダーを指さした。
確かに曜日は、日曜から始まっていたのである。
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しかしそれも、ずいぶんとおかしな話だ。
聖書には「神は6日で世界を創り、7日目に休まれた」とある。
月から土まで働いて、最後の日曜に休む、というリズムと同じだ。だとしたらやはり、月曜始まりにするのが自然だろう。
日曜始まりでは、まだ働きもしないうちから休んでいる感じになる。
そんなぐうたらな、神さまがいるもんか。
それじゃあまるで、オレみたいじゃあないか、とツッコみたくなる。
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だがこの日曜始まりには、もっとずっと深い由緒があるようだ。
カレンダーの歴史は、キリストの生誕よりはるかに古い。
その当時広く行われていたユダヤ教では、安息日は――つまり誰も働いてはならない休日は、土曜日とされていた。
日曜から金曜までの6日で働き、土曜日に休む。神もまた、そのようにして世界を創ったわけで、日曜始まりのカレンダーとぴったり話が合致していたのである。
もちろんその後興ったキリスト教では、日曜が休日である。
だが今度はそこでは、別の事情がからんできた。
何とイエスキリストが、磔の後に復活を遂げたのは、日曜だとされているのだ。
復活は新たな始まりの日だ。だとしたらやはり、週の初めは日曜にするのが理にかなっている、というわけだ。
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それにしても、そのどちらもすでに2000年も前の話である。
古い伝統を、いつまでも引きずることはない。
日本にしたって、もう40年前とは事情が違う。
週休二日がすっかり定着して、競馬マニアならずとも、土日をセットで考えるのは当たり前になってきた。
そろそろ社会の変化に合わせて、切り替えを考慮すべきころだろう。
いや実際、今では世界の潮流はそちらに向かっている。
ISOは月曜始まりを、国際標準と定めた。ヨーロッパ諸国のほとんどは、これを採用している。
わが国でもビジネス手帳を中心に、月曜周期がすっかり増えてきた。
40年前のあの日に、同僚の指摘に納得した自分も、今となってはもう引き下がるつもりはない。
こうしてしょぼしょぼの高齢者となっても。月曜始まりのカレンダーが、街中を飾るのを見届けるまでは、まだまだ死んでも死にきれない気分なのである(笑)――
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