宝くじの売り上げが、減少の一途らしい。
2005年には1.1兆円だった数字が、2024年は7600億円。20年で3割減だという。(注)
今日日(きょうび)の若者は、宝くじなんか買わないのだ。あんなものは見向きもしない。
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よく「宝くじに夢を託す」なんて言う。
てことは、現実世界に失望した人間が、せめてくじ運にすがるのだろうか?――だがおそらく、そんな分析は間違っている。
事実はまったく、逆だと思う。未来に夢を抱けるからこそ、宝くじにも夢を抱ける。
思えば高度成長期、みんなが明るい未来を思い描いた。だからこそついでに、宝くじも当たりそうな気がした。
おめでたい浮かれ気分が、一攫千金のお遊びを盛り上げていたのだ。
だが今では、誰も幸せを夢見ない。この先にバラ色の運命が待ち構えているとは、とても思えない。
だとしたら、宝くじが当たる気がしないのも当然なのだ。
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もちろんそんな若者たちの判断は、きわめて賢明なものだ。
宝くじも要するに賭け事であり、やらないに越したことはない。のみならず宝くじは、とりわけ割の悪いギャンブルなのだ。
目の玉の飛び出るようなその賞金に、幻惑されてはならない。
くじの売上総額のうち、賞金に回されるのは半分だけだ。残りの半分は主催者にピンハネされる。
悪名高い競馬ですら、ピンハネ率25%だから、ありえないほど理不尽な仕組みなのだ。
数学的に言うなら、300円の宝くじの期待値は150円。永遠に宝くじを買い続けたら、投資総額の半分を失う計算だ。
およそ理知的な人間が、手を出すしろものではない。
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そんな「コスパの悪い」娯楽が、クールな若者に敬遠されたのも当然の成り行きだった。
そうしてせっせと節約して、お金を貯めこむ。それをもっと充実した、人生の楽しみにつぎ込む?
もしそうだとしたら、それはそれで夢がある。素晴らしい生き方じゃないか。
だがしかし、もしもその逆に。
そうしてせっせと節約して、何とか明日に食つなぐしかない――そんな世の中になったというのなら、なんともはや、悲しすぎる話ではあるまいか。……
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