ある男が思いついた。
選挙に当選して国会議員になれば、歳費が年間2000万円もらえる。加えて調査研究費と称して、1200万が追加される。
仲間を10人集めて政党を作れば、政党交付金が年間10億はころがりこむ。
もちろん出費が多ければ赤字になってしまう。
だけどSNSで発信するだけの活動なら、丸儲けじゃあないか。
これなら十分、おいしいビジネスになる。
さて、選挙に通るにはどうしたらいいか――というので、欧米で流行っている「ポピュリスト政党」を参考にした。
なるほど、エリートと移民を叩けばいいのか。そして民族主義とバラマキ財政を礼賛する。何よりも、デマをまき散らすことにためらいを感じてはならない。……
日本にそのままコピペするのは違和感があるけど、まあいいか。
と、やってみたらこれがまた大当たりした。それでこの前の選挙で、〇〇党が大旋風を巻き起こしたわけだ。
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まあ、ロシアの後ろ盾も大きかった。
ロシアと言えば、2000年代からずっと、敵対する西側諸国の選挙に干渉し続けた。
ロシアに有利な候補が当選すればそれでよし。そうでなくても、分断と対立を生んで社会が混乱すれば、国力を削ぐことができるからだ。
2016年には英国の国民投票でブレグジットが決定し、アメリカではドナルド・トランプが大統領となった。
どちらも予想外の番狂わせだったのは、ロシアの攪乱があったからこそだ。
その後の欧州政治のてんやわんやにも、その暗躍がある。
その手口は、インターネットを通じた情報工作だ。
特定の偏った主張やデマを、AIを使ったボット(注)によって、ほとんど無限に拡散する。
その結果、裏の事情を知らない人間の目には、まるでとんでもない騒ぎが起きているように見える。
なんだか日本の国民全員が、今や外国人問題で怒り狂っているようだ。だとしたら、自分もおちおちしてはいられない。今すぐ立ち上がって。〇〇党に一票を投じなければ、と。――
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その主張は一見、国粋主義のようにも見える。
だがそれは違う。あいつらには実は、思想なんて何もない。あるのはただのビジネス戦略だ。
世間の耳目を集めそうな、大衆受けする政策を片っ端からかき集める。それをアラカルトのように並べ立てた。ただそれだけのことなのだ。
その顔を見ればわかる。
本当の国士なら、もっと取り憑かれた、狂信的な目をしている。あいつらのは、ただのおめでたい馬鹿面だろう。
思いつきで始めたビジネスが、まんまとうまくいったのにほくそ笑んでいる。
そのゆるみきった表情を見ると、本当に腹が立ってくる。
もちろん流行りものの商売なんて、たいていは一時的な盛り上がりで終わってしまう。
○○党の勢いも、長続きはすまい。
というより、ヤツらが終わらなければ、今度は日本が終わってしまう。
そんなことにならないことを、今はただただ祈るばかりである。――
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