<嗚呼、商人道>「あきんど」たちの詐欺商法

 近所に人気の回転ずし「スシロー」がある。月に一度は、寿司が食いたくなって利用している。

 いつも午前11時の開店を狙って、一人で出かける。数名の開店待ちの行列ができるが、たいてい自分が先頭である。
 ゆえあって店内で食べずに、「お持ち帰り」で注文する。その旨を店員に伝えると、注文入力用の端末を渡される。
 端末にはまず、「今すぐお持ち帰り」or「時間指定」の選択が示される。前者を選ぶと、「ただ今の待ち時間約15分」と表示される。

 自分は小食なので、5皿しか注文しない。当然入力はすぐに終わる。
 すると注文内容を印字した感熱紙の確認書レシートが出力されて、客に渡される。
 レシートにはなぜか、「お渡し予定時刻11時30分」と書いてある。

     *

 現在の時刻はまだ、11時05分である。
 引き算すると、所要時間は25分ということになる。
 さきほどの端末の「ただ今の待ち時間約15分」よりも、さらに延長されている。

 そのうえ開店直後の店内はまだ客もまばらで、混雑はない。現にテーブル席の客は、もう注文の品をゲットして、おいしそうにパクついている。
 それなのに先頭で入店したはずの自分の、たった一人前の注文が25分後に手渡し、というのはどう見ても不条理である。

 否。
 実際に25分待たされる、ということはあまりない。ものの5分もすると、「ご注文の商品がができあがりました」と声がかかるのが普通である。
 だがだとしたら、さっきの「11時30分」の印字は一体何なのか?

     *

 店の魂胆は明らかである。
 ものの5分もかからない、と予想していても何らかの事情で遅れることもある。
 そんな場合にも苦情が来ないように、あらかじめとんでもなく長めの時間を、告知しているのだ。客が文句を言ったら、「だってさっきのレシートに11時30分と書いてあったでしょ」と白ばっくれることができるように。 

 そうしておけば、実際に5分で渡せたときには客は喜ぶ。ずいぶん速く作業をしてもらったなあ、と店に感謝するにちがいない。――そんな読みも働いているかもしれない。 
 自分はかつて、「余命宣告はサバを読む」という話を書いた。医者は患者家族に、余命を短めに伝えておくのだ、と。ちょうどそれとは逆に、スシローは待ち時間を長めに告知する。
 どちらの場合も、その動機は同じである。そうして数字をいじることで、印象を操作して誘導する。つまりは客の心を、いいように弄んでいるわけだ。

 人をバカにしている、としか言いようがない。
 店の立場に立てば、その気持ちはわからんでもない。だが客は心理学の、実験動物とは違う。
 もっと相手の人格に敬意を払った、誠実な対応があってしかるべきだろう。

     *

 加えてそこには、持ち帰り客に対する差別がある。
 だってそうだろう。
 店内のテーブル客が注文したとして、「25分待ち」の表示なんかしない。そんなことをしたら、激怒した客が帰ってしまうだろうから。

 それに比べて、持ち帰り客ならかまわない。
 万が一店が混雑して、てんやわんやになった場合には。あいつらの方を待たせておいて、店内客を優先する。逆に店がすいていれば、5分で仕上げて渡す。
 つまりは持ち帰り客なんて、単なる作業の調整弁としてしか、考えていないわけだ。

 持ち帰り客なら、「25分待ち」でも大丈夫だ。いったん店を出て、近くのショッピングモールか何かで、時間をつぶすことができる。
 まさか受付の横の椅子に座ったまま、イライラと待ち続けるような間抜けはいないだろう――
と、この自分のことをすっかり「間抜け」扱いして、あざ笑っているにちがいない。……

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