<追悼><名馬> 種付けのことをすっかり忘れていたハルウララ

 競馬のハルウララが亡くなった、というニュースが流れた。(注)
 113連敗(0勝)という記録で、かえって人気を集めた。ブームにさえなった「名馬」である。

 この馬についてはちょうど2年前、過去投稿で論評した。
 追悼の意味も込めて、ここで抜粋・再録しておきたい。

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<ハルウララ編 競馬に人生を重ねる>

 愚かなファンほど、競馬のレースに、人生を重ね合わせる。――
 笑っちゃうのは、「ハルウララ」だ。
 中央競馬ですらない高知競馬で、生涯成績は113戦0勝。一回も勝たなかったのである。

 あまりにも負け続けるので、逆に人気が出た。
 60連敗を越えたあたりから、話題になり始める。
 初めはみんな、ネタとしておもしろがっていただけだった。
 この馬の単勝馬券はけっして「当たらない」。だから交通事故のお守りになる、なんてシャレを言ってるヤツもいた。

 だがそのうち、例の浪花節の、人生競馬が始まった。
 負けても負けても一生懸命に走る、健気な馬の姿が感動的だ、とのたまうのだ。
 下流国民が、またしても自らのうだつの上がらない人生を重ね合わせて、応援し始めたわけだ。

     *

 だがやつらは、何にもわかっちゃいない。

 ハルウララの走っているのは、強者つわものどもがしのぎを削る、中央の大レースではない。
 田舎競馬の「未勝利戦」。今まで勝ったことのない馬同士が、1着を競い合う「駆けっこ」みたいなレースだ。

 シーズン当初は、そこそこの能力の馬もいる。でもそんな馬はすぐに勝利して、「イチ抜けた」となる。
 一年の最後には、箸にも棒にも掛からぬ馬ばかりが後に残って、ただ馬券を売るためにお遊戯を繰り返すのだ。

 クズ馬同士の争いだから、どんぐりの背比べで、もはや力量なんて関係ない。何かの風の吹き回しで、ちょっとでも他よりやる気を出した馬は、たちまち勝利を収めて卒業していく。
 そこで一生負け続けるってことは、やる気がまったくないってことだ。
「健気に一生懸命走って」なんていない。騎手に強いられて、いやいや走っているだけだ。

     *

 あるいはひょっとしたら、もっとたちが悪い。
 一生懸命走っている、ふりだけはする。
 そうして外面そとづらだけは繕っておいて、実はチンタラと楽をして、手抜きで走っている。

 表と裏を使い分けて、適当にその場を流しておけば、とりあえず今日明日のおまんまにはありつける。
 無理をして頑張ってレースに勝ったって、賞金がもらえるのは人間だけだ。馬に特別ご馳走がでるわけじゃない、と知っているのだ。

 大きな欲なんかかくよりも、こじんまりと無難に生きた方が、結局は得をする。
 そんなこすからい処世術を身に着けたヤツって、人間にもいるだろう。
 つまりはまったく別の意味で、「人生を重ね合わせ」たくなる、ずる賢い馬なのだ。
……

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<種付けのことをすっかり忘れていたハルウララ>

(注)
シンボリルドルフ:(1981~2011)華々しい戦績を残した現役を引退後、種馬としてさんざんやりまくった挙げ句、2011年に惜しくも死没。
ハルウララ:(1996~)過去投稿執筆当時(2023年)は、27歳でまだ存命。それでも人間で言えば82歳くらいの高齢であった。


――ハルウララとシンボリルドルフの、当然のことながら架空の会話

ウララ  「何をそんなに、必死になって走ってるの? 辛いトレーニングに、耐えたりして?」
ルドルフ 「えっ?」
ウララ  「あんまり頑張りすぎるから、みんな疲れ切って、早死にしちゃったりするんじゃないの」「テキトーに走っておけばいいのよ。一生懸命なふりさえしておけば、人間なんて外面にだまされる。感動のレースとか言って、勝手に盛り上がってくれるのよ」

ルドルフ  「でも、勝ちたいんだよ。『栄光への架け橋』を、オレだって渡りたいんだよ」
ウララ   「そりゃ名誉なことかもしれないけど、あなた新聞読めんの? テレビでスポーツ番組見てるの? インタビュー受けたの? 関係ないでしょ」
ルドルフ  「そりゃあ、そうだけど……」

ウララ  「優勝なんかしたって、いい思いができるのは、賞金もらった人間だけよ」
ルドルフ 「えっ?」
ウララ  「勝ち馬に、何かご褒美出るの? 『さらなる高みを目指す』とか言われて、これまでよりもっと辛いトレーニングが、始まるだけよ」「あーた、そんなに勝ちまくって、何かいいことあったの?」

     *

ルドルフ 「でも、種付けができるよ」
ウララ  「えっ?」
ルドルフ 「競馬は血統のスポーツだ、って知っているよね」「1%の良馬だけが、子孫を残すことができる。残りの99%の駄馬は、種付けをさせてくれない」
ウララ  「まあ、そうですけど」
ルドルフ 「あいつらなんて、一生童貞のまま終わる。馬だから、センズリもこけない」
ウララ  「あらまあ」

ルドルフ 「オレなんか競馬の成績がよかったから、やりたい放題だぞ」「3か月のシーズンで、200回。だいたい一日三回できるぞ。」
ウララ  「えっ?」
ルドルフ 「しかも相手は、同じ女じゃあない。とっかえひっかえ、違う女とできる」「まあ、一回一分の、早漏だけど(汗)」
ウララ  「あらまあ」

     *

ルドルフ 「馬にはご褒美がないとか言ってるけど、種付けが最高のご褒美なんだ。それだけが楽しみで、走っているんだ」
ウララ  「えっ?」
ルドルフ 「名馬とか言われる馬たちは、みんな種付けがしたくて、あんなに頑張っているんだ」
ウララ  「あらまあ」

ルドルフ 「だいたいおめーは、食い物のことしか考えてないだろ。楽して飼い葉にありつくことしか?」「馬にはもっと他の、種付けっていう楽しみがあるんだよ」
ウララ  「まあアタシは女ですけど。牝馬ですけど」
ルドルフ 「メスだって同じだよ」「メスの繁殖は一年一回だから、引く手あまたの売り手市場だ。でもそれでも、あんまり成績の悪い牝馬は、オトコにありつけないよ」
ウララ  「ガーン。あっちゃー」

     *

ウララ  「アタシにも一回だけ、繁殖の話はあったのよ」
ルドルフ 「えっ?」 
ウララ  「でも直前になって、なぜか話が流れてしまったわ」「あれってアタシの競馬の、成績が悪かったからなのね。」「駄馬だと思われたからなのね。まあ実際、駄馬ですけど」
ルドルフ 「まーそーだろ」

ウララ  「成績のせいで、このまま種付けしてもらえずに、一生終わるのね」「顔はそこそこ、美人な方なのに」
ルドルフ 「そーでもねーよ」

ウララ  「チンタラ楽することばかり考えていた、報いなのね」「このままオトコを知らずに、終わるのね。せっかくの『馬並み』も、味わうことができずに」
ルドルフ 「そうだよ。ざまーみろ」

ウララ  「こんなことなら、もっとマジメに走っておくんだった」「種付けのことなんて、ちっとも考えてなかった。アイドルホースとか言われて、ついいい気になってたわ――」
ルドルフ 「いまさら後悔しても、むだだよ」「気が付くのが遅かったな、バアさんwww」

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