風俗店の詐欺商法――11月の新人には入るな

 似ても似つかぬ修正写真と、偽物のプロフィール紹介で客をおびき寄せる。――

 だがそんな風俗嬢の手口が、そういつまでも通用はしない。
 一度だまされた客は、もちろん二度とだまされない。

 ひと月かふた月もすれば、その店の固定客はだいたい一巡する。仲間内の口コミもあって、悪評が広まってしまう。
 そうなれば三月目には、もう客はピタリと付かなくなる。

     *

 そうしてついに「お茶っ引き」となった女は、だがしかし少しもめげはしない。
 それはそうだろう。別に今の店に、終身雇用されているわけではない。
 稼げなくなったら、またよその店に移籍すればいいだけの話だ。

 また新たな詐欺写真と、でっち上げの紹介文を引っ提げて。
 行った先で再び、期待の美少女新人に化けおおせる。
 そこで数か月稼いで、またしても正体がバレたら今度は次の店へ、――というように永遠に同じことを繰り返すことで、ちゃんと大枚が懐に入る。
 そんなトンデモない仕組みがあるのだ。

 こうして数か月単位で、風俗店を次々と渡り歩く――転々とする人種のことを、業界用語で「転々虫(てんてんむし)」と呼ぶ。
 てんとう虫のことを幼児語で「てんてん虫」と言うことがある。背中に「点々」の模様があるからだ。
 本来は実に可愛らしい呼称だが、こうして詐欺女たちの名称に転用されると、とたんになんとも忌まわしい響きを帯びてくる。――

     *

 風俗産業の客の入りには、一年ごとに繰り返される決まったパターンがある。
 12月が繁盛のピークになる。
 ボーナスが入った直後で懐が温かい上に、年末休暇がある。クリスマスや年の瀬の浮かれた空気も手伝って、押すな押すなの大盛況となる。

 それが正月明けまで続くと、ピタリと客足が止まる。
 散財の反動で財布は空っぽだし、何しろ寒い! 雪のちらつく中を、のこのこ風俗に出かける勇気はない。
 そのまま大底ボトムを迎えて、2月が最大の閑散期となる。――

 これと同じことが、半年後の夏のボーナスでも繰り返される。
 だがこちらは大したイベントもないので、年末ほどは盛り上がらない。
 逆に8月の夏枯れも、お盆休みには一時息を吹き返す。――

    *

 この客入りのサイクルに、転々虫たちの移動の周期がシンクロする。
 たとえば11月。お茶引きの風俗嬢はこう考える。
 来月はボーナス月、店は大変な繁盛が予想される。だがすでに悪評の知れ渡った自分は、けっして客に選ばれることはない。
 それではみすみす、チャンスを逃してしまう。このままこの店に居続けたまま、かきいれ時を迎えるわけにはいかない。――   

 というわけで、ここがちょうど移籍のタイミングとなるわけだ。
 そうして向かった新天地で、ちゃっかり期待の美少女新人になりすます。
 まだ何も知らない他店の客を、だまし放題の1か月を。ちょうど年末年始のピークにぶつけることで、荒稼ぎをしようという魂胆なのだ。

 かくしてA店の地雷嬢が移籍してB店の「未経験素人新人」に化け、B店の地雷嬢がC店の……というように、玉突き式に入退店の連鎖が始まる。
 一つのエリアだけではない。全国津々浦々、業界全体を巻き込んでの大移動が――大対流のようなことが、目には見えない海の底で起きているわけだ。

     *

 11月ごろに大量に採用される新人風俗嬢の、そのほとんどは転々虫の移籍組だ。
 そしてその全員は地雷嬢である。――なぜなら? もし元の店で客が付くのだったら、
この大切なかきいれ時に店を替えるような、冒険をするはずはないからだ。
 逆に言うなら、この時期に店を移らない。。。。。。連中は、それなりに値打ちのある女だと言える。

 11月の新人には入るな――このセオリーは、絶対に覚えておいた方がいい。
 ボーナスで財布が潤うと、ついつい浮気をしたくなる。いつもの馴染みの女の子とは別の、他の子も試してみたくなる。
 だがそんな時にも、くれぐれも古株の女の子の中から相手を選ぶことだ。

 風俗店の詐欺商法にだまされて、11月の新人に入ったりすれば、必ず地雷を踏む。
 そんな地雷に吹き飛ばされて、ついには両手両足を失った男の例は、それこそ枚挙にいとまがない(笑)――

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