男子進学校の存在は女性差別か

「男女別学」の功罪を論じる者がいる。

 中でも驚かされたのは、こんな主張だ。

男子進学校の存在は、女性差別である。

東大合格者数ランキングだけを見ても、ベスト5はすべて男子校が占めている。

つまりは最高水準の教育を授ける教育機関が、女性の入学を拒んでいる。女性を排除しているのだ。

 例によって、何でもかんでも女性差別にしたがる連中だが、一見したところ着眼点は鋭い。論理も完璧で、なかなか反論はむずかしく思える。
 ご本人も世の中を論破した気になって、さぞかし悦に入っていることであろう(笑)

 だがしかし、理屈が通っているからといって、それが「正しい」とはかぎらない。
 まったく現実が見えていない、空理空論というものもある。牽強付会もある。
 さしずめこれなんか、その典型のような言説であろう。

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 長年受験指導にたずさわった者として、――あるいは遠い昔に(笑)現に男子進学校を卒業した者として、言わせてもらうなら。
 男子進学校は全然、「最高の教育」なんか授けちゃいない。
 自分の通った学校の授業なんて、箸にも棒にも掛からない。あんなものいくら受けたって、一流大学なんて入れやしない。

 じゃあ何で合格実績が上がるのかというと、生徒が学校以外のところで勉強しているからだ。
 自分で参考書をひもといたり。通信添削をやったり。今風に言えば、○○会みたいな有名進学塾に通ったり。
 そしてもちろん、それらの手段は何一つ「男子専用」ではない。女子にも同じ機会が平等に開かれている。――
 身もふたもない言い方かもしれないが、それが受験の現実なのだ。

 学校サイドもそれがわかっているから、あまりシャカリキになって受験指導などしない。
 まあみんな塾でも行って、勝手に勉強してください、という放任のスタンスなのだ。
 むしろ積極的に生徒に関与して、ちゃんと学力を伸ばそうとしているのは、女子校の方だろう。
 女子校のカリキュラムは、傍で見ていても実にすばらしい。「最高水準の教育を授け」ているのは、むしろ女子進学校だ。
 むしろそこから排除された男子生徒たちこそ、良質の教育の機会を奪われているのだ(笑)――

 ついでにもっと、身もふたもないことを言わせてもらおう。
 学校の合格実績が上がるのは、別に学力をつけたからではない。
 頭のいい小学6年生が、中学受験をして、中高一貫の進学校に入って来る。頭がいいから、6年後には一流大学に合格する。
 何のことはない。合格するようなやつが初めから在籍しているだけで、学校が受からせたわけではない。
 ただそれだけのことで、中高6年間の教育はあまり関係がない。キセルと同じで、中身は別に空っぽでかまわないのだ(笑)――

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 それではなぜ、女子進学校は男子の場合ほど、合格実績が上がらないのか?
 理由は簡単だ。
 彼女たちは「受からない」のではない。「受けない」のだ。あるいは「目指そうとしない」と言ってもいい。
 
 東大を受ければ合格確実の生徒が、受けようとしない。難関は回避して、ワンランク下の大学に進学していく。
 尻を叩かれて勉強することもなく、おっとりとした学校生活を送る。
 彼女たちもその親も、高望みはしない。女なんだから、無理に頑張る必要はない。競争社会に身を置いて、心身をすり減らすなんて馬鹿げている。
 そこそこのお嬢様大学に進学して、最後にはいいところに嫁に行けばいい、くらいに本気で思っているのだ。

 目指しもしないし、受けもしないのだから、合格者ランキングに載るはずもない。――それが数字の舞台裏であって、教育の質がどうとかの話ではないのである。
 もちろん、そんな彼女たちの意識には問題がある。古臭い男性中心のジェンダー観に、毒されている。長い女子差別の歴史が尾を引いている。――そう糾弾することは可能である。
 だがそこから「男子校害悪説」に持っていこうとするのは、どう見ても無理筋であろう。

     *

<追記>

 東京に「桜蔭」という私立女子校がある。
 菊川怜や豊田真由子の(笑)出身校だ。
 昨年の東大合格者数ランキング8位で、女子校として唯一ベストテン入りしている。

 合格者数72名は、開成(148名)のほぼ半分だが、ここに数字のトリックがある。
 桜蔭の一学年の生徒数(235名)は、開成(400名)の半分強なのだ。
 つまりは合格率的には、すでにして男子一位校と並ばんとする勢いなのである。
 もし桜蔭の女生徒たちが、もう少しモチベーションが高ければ。男子に伍して何が何でも、受験戦争を戦い抜く気構えがあれば。たちまち開成など歯牙にもかけない、トップ受験校に躍り出るであろう。

 それもそのはずだ。
 首都圏の中学受験で男子の場合、私立の御三家は麻布・開成・武蔵だ。 
 三校の間に序列はない。どこを選ぶかは好みによる。つまりはそれぞれの学校は、成績上位者のうちの三分の一ずつを抱え込む形になる。
 ところが女子の場合は、 実質上桜蔭一強である。 「女子御三家」なんて、御三家好きの世間が勝手にでっちあげただけで、桜蔭に受かりそうもないやつが雙葉・女子学院に流れる。本当の成績上位者は、全員桜蔭になだれ込むわけだ。
 つまりは桜蔭は、男子進学校の三倍、良質な生徒を抱え込む。
 だとしたら最高の教育が行えるのは、男子進学校などではない。かの女子校こそが、それでなくてはならないはずだ。――

 逆に言えば、男子進学校なんて言っても、生徒の三分の二はパープリンである(笑)
 麻布・開成・武蔵なんて卒業したところで、人生何にも、いいことなんてありはしないのである(笑)

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