「男女別学」の功罪を論じる者がいる。
中でも驚かされたのは、こんな主張だ。
男子進学校の存在は、女性差別である。
東大合格者数ランキングだけを見ても、ベスト5はすべて男子校が占めている。つまりは最高水準の教育を授ける教育機関が、女性の入学を拒んでいる。女性を排除しているのだ。
例によって、何でもかんでも女性差別にしたがる連中だが、一見したところ着眼点は鋭い。論理も完璧で、なかなか反論はむずかしく思える。
ご本人も世の中を論破した気になって、さぞかし悦に入っていることであろう(笑)
だがしかし、理屈が通っているからといって、それが「正しい」とはかぎらない。
まったく現実が見えていない、空理空論というものもある。牽強付会もある。
さしずめこれなんか、その典型のような言説であろう。
*
長年受験指導にたずさわった者として、――あるいは遠い昔に(笑)現に男子進学校を卒業した者として、言わせてもらうなら。
男子進学校は全然、「最高の教育」なんか授けちゃいない。
自分の通った学校の授業なんて、箸にも棒にも掛からない。あんなものいくら受けたって、一流大学なんて入れやしない。
じゃあ何で合格実績が上がるのかというと、生徒が学校以外のところで勉強しているからだ。
自分で参考書をひもといたり。通信添削をやったり。今風に言えば、○○会みたいな有名進学塾に通ったり。
そしてもちろん、それらの手段は何一つ「男子専用」ではない。女子にも同じ機会が平等に開かれている。――
身もふたもない言い方かもしれないが、それが受験の現実なのだ。
学校サイドもそれがわかっているから、あまりシャカリキになって受験指導などしない。
まあみんな塾でも行って、勝手に勉強してください、という放任のスタンスなのだ。
むしろ積極的に生徒に関与して、ちゃんと学力を伸ばそうとしているのは、女子校の方だろう。
女子校のカリキュラムは、傍で見ていても実にすばらしい。「最高水準の教育を授け」ているのは、むしろ女子進学校だ。
むしろそこから排除された男子生徒たちこそ、良質の教育の機会を奪われているのだ(笑)――
ついでにもっと、身もふたもないことを言わせてもらおう。
学校の合格実績が上がるのは、別に学力をつけたからではない。
頭のいい小学6年生が、中学受験をして、中高一貫の進学校に入って来る。頭がいいから、6年後には一流大学に合格する。
何のことはない。合格するようなやつが初めから在籍しているだけで、学校が受からせたわけではない。
ただそれだけのことで、中高6年間の教育はあまり関係がない。キセルと同じで、中身は別に空っぽでかまわないのだ(笑)――
*
それではなぜ、女子進学校は男子の場合ほど、合格実績が上がらないのか?
理由は簡単だ。
彼女たちは「受からない」のではない。「受けない」のだ。あるいは「目指そうとしない」と言ってもいい。
東大を受ければ合格確実の生徒が、受けようとしない。難関は回避して、ワンランク下の大学に進学していく。
尻を叩かれて勉強することもなく、おっとりとした学校生活を送る。
彼女たちもその親も、高望みはしない。女なんだから、無理に頑張る必要はない。競争社会に身を置いて、心身をすり減らすなんて馬鹿げている。
そこそこのお嬢様大学に進学して、最後にはいいところに嫁に行けばいい、くらいに本気で思っているのだ。
目指しもしないし、受けもしないのだから、合格者ランキングに載るはずもない。――それが数字の舞台裏であって、教育の質がどうとかの話ではないのである。
もちろん、そんな彼女たちの意識には問題がある。古臭い男性中心のジェンダー観に、毒されている。長い女子差別の歴史が尾を引いている。――そう糾弾することは可能である。
だがそこから「男子校害悪説」に持っていこうとするのは、どう見ても無理筋であろう。
*
<追記>
東京に「桜蔭」という私立女子校がある。
菊川怜や豊田真由子の(笑)出身校だ。
昨年の東大合格者数ランキング8位で、女子校として唯一ベストテン入りしている。
合格者数72名は、開成(148名)のほぼ半分だが、ここに数字のトリックがある。
桜蔭の一学年の生徒数(235名)は、開成(400名)の半分強なのだ。
つまりは合格率的には、すでにして男子一位校と並ばんとする勢いなのである。
もし桜蔭の女生徒たちが、もう少しモチベーションが高ければ。男子に伍して何が何でも、受験戦争を戦い抜く気構えがあれば。たちまち開成など歯牙にもかけない、トップ受験校に躍り出るであろう。
それもそのはずだ。
首都圏の中学受験で男子の場合、私立の御三家は麻布・開成・武蔵だ。
三校の間に序列はない。どこを選ぶかは好みによる。つまりはそれぞれの学校は、成績上位者のうちの三分の一ずつを抱え込む形になる。
ところが女子の場合は、 実質上桜蔭一強である。 「女子御三家」なんて、御三家好きの世間が勝手にでっちあげただけで、桜蔭に受かりそうもないやつが雙葉・女子学院に流れる。本当の成績上位者は、全員桜蔭になだれ込むわけだ。
つまりは桜蔭は、男子進学校の三倍、良質な生徒を抱え込む。
だとしたら最高の教育が行えるのは、男子進学校などではない。かの女子校こそが、それでなくてはならないはずだ。――
逆に言えば、男子進学校なんて言っても、生徒の三分の二はパープリンである(笑)
麻布・開成・武蔵なんて卒業したところで、人生何にも、いいことなんてありはしないのである(笑)
コメント