「天皇家もちゃんと税金を払っている」は本当か

 よく「皇室が税金も払わずに、ぜいたくしているのはズルい」みたいな言い方をする。

 それを聞いた「識者」がしゃしゃり出てきて、したり顔でこう諭す。(注)

皇室に納税義務がないのは、イギリス王室の場合です。

日本の皇族には、一般国民と同じように納税の義務があります。

現に昭和天皇が崩御された際には、課税財産が約20億円と算定されました。 現上皇陛下は約4億3000万円の相続税を、納付されたそうです

 もちろんご指摘の事実関係に、嘘偽りはない。
 だがそれにもかかわらず、その主張にはとてつもなく忌まわしい、印象操作の詐術が含まれている。

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 へえ、天皇もちゃんと相続税を払うんだ。財産が20億円もあって、4億いくらも課税されたんだ。さすが金持ちは違うなあ――と思ったとしたら、世間知らずのただの馬鹿である。

 たとえばユニクロの創業者の、柳井正の資産は推定約6兆円だ。かつてはわが国の王様だったお人の財産が、ユニクロの3000分の1というのは、どう考えたってありえないだろう。 

 種明かしをすれば20億円というのは、天皇のお手元金(=ポケットマネー)のことである。
 国会の承認なしに、いつでも自由に使える「お小遣い」が20億円あり(笑)、それに対する課税が行われたわけだ。

 天皇一家のお住まいになるあの皇居には、推定20兆円の不動産価値がある。それに全国各地に散らばる御料地・御用邸、たくさんの宝物の分まで加えたら、総額はいくらになるか知れない。
「天皇家の資産」として我々がイメージするそのどれにも、相続税はかからない。固定資産税も支払う必要はないのだ。

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 理由は単純である。
 それらの土地・建物のすべては、法律上は――形式上は国有の財産と解釈されているのだ。
 国が無償で供与することで、もっぱら天皇一家に使っていただいている。ただそれだけのことで、天皇の私有財産とはみなしていない。
 だから税金はかかならい。代替わりしても、相続税の対象にはならないわけだ。

 所得税に関しても、同様である。
「天皇・皇族も所得税を払う。たとえば皇族が書物を出版して印税を得れば、納税の必要がある」
というのは本当である。
 だがもちろん彼らが、ただ印税で生活しているわけではない(笑)

 天皇家の典雅な日常を支えているのは、年間3億円あまりの「内廷費」だ。皇族で言えば「皇族費」となる。
 その呼称で明らかなように、どちらもまるまる国の負担だ。皇室という存在を維持するための、国家の必要経費とみなされているのだ。
 ということは皇族個々人の懐に入る、収入・所得とは違う――という理屈になって、これもまた課税の対象とはならないのである。

 つまりは「皇室も納税する」のは事実だが、その内実は庶民感覚とは大きく異なる。
 衣食住にかかわるすべての主要な事項は、税金を免除される。そのくせどうでもいいような、ポケットマネーと印税収入だけは、しっかりと課税の対象とされているのだ(笑)

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 別段そうした税務解釈を、非難しているわけではない。 
 天皇・皇族を憲法が定めた国家の機関と考えれば、機関費を国家がまかなうのは当然である。
 民間企業だって、豪勢な社長室も社用車も会社持ちだ。社員寮もまた、二束三文で借りられる。それと同じことだ。

 だがだとしたら、どうしてもっと堂々と胸を張って、
「皇室は特別な身分ですから、税をお取りするようなことはございません」
と公言しないのだろう?
 わざわざポケットマネーと印税収入は別枠にして、納税の体裁を繕おうとするのだろう?

 おそらくそこには、日本人にはおなじみの本音と建前の――裏と表の使い分けがある。
 皇室は特権身分であるという、不都合な事実は押し隠す。表向きは「愛される皇室」を演出する。 
 ほうら、わたくしたちもちゃんと、税金なんぞをお納めいたしております。国民のみなさまと同じです――そんなポーズを取ることで、下々しもじもの不満をそらす。

 善良で素直で頭の悪い下流市民どもを、そうしてまんまと騙しおおせて、いいように操ろうとする。……
 そんな小ずるい魂胆がありはしないかと、どうしても勘ぐらざるをえないのである(笑)

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