「子ども放置禁止」条例とマリー・アントワネット

 埼玉の県議会委員会が、「子ども放置禁止」条例改正案を、可決したらしい。

 子どもの放置など、悲惨な事件が相次いでいるのは、ご承知の通りだ。
 それはけしからんと、お偉方が対策に乗り出したわけだ。
 子どもを自宅に置いたまま、外出したりするのは児童虐待だ、と禁止にするという。
 
 全国に先駆けた条例で、児童福祉のパイオニアになると、鼻高々らしい。

     *

 だがしかし、まったくもって、お笑いである。
 本会議での採決はもう少し先らしいが、もしそんな条例が通ったらどうなるか、火を見るより明らかだ。

 共働きの主婦は、どうするんだ。ましてや働きに出る、シングルマザーは? 
 もう、にっちもさっちも行かないだろう。当然、非難殺到である。
 具体的な批判は、このサイトあたりを参考にしてほしい。
 要するに、自民党の古顔政治家の、頭の中にあるのは戦前の社会像・家族像だ。
 専業主婦のお母さんが、家庭を守っている。だからその気になれば、いつでも子供の側にいてやれる。そんなイメージが捨てきれない。
 お母さんが外に出て働く、なんて状況は頭をかすめもしないのだ。

 この間のコロナのときも、そうだったろう。
 感染が広がっているから、学校は一斉休校だ、と。
 子供が学校に行かなくても、お母さんが家で見てくれるから問題ない、と健やかに信じていたのだ。

 実際に起きたことは、ご存じの通りだ。
 子供が家にいるから、お母さんは働きに行けない。
 給料がもらえないから、おまんまが食べられない。
 働く人手が足りなくなり、世の中が回らなくなった。社会機能が、ほとんど停止しかけた。
 そんな事態を前にパニックになって、あわてて後手後手の政策を打ったのは、記憶に新しい。

     *

 何という醜態だろう。
 今回もまた、きっと同じ茶番劇を繰り返す。

 かつてマリー・アントワネットは、パンに事欠き飢えている農民の話を聞いて、こう言い放った。
「パンがないなら、ケーキを食べればいいじゃない」
 パンなんかより、ケーキの方がおいしいのに、何でパンにこだわるんだろうと、不思議がっていたのだ。
 
 この有名なエピソードは、どうもフィクションらしいのだが、上流階級の勘違いを表して、言い得て妙である。
 ケーキなんてぜいたく品の姿は、一生拝んだこともない庶民の実情なんて、王妃はまるで理解していないのだ。

 自民党の議員たち醜態も、それと同じだ。
 置き去り事故が続くなら、親がずっと、側に付いていればいいじゃない。
 学校が休みなら、家でお母さんが見ればいいじゃない。――
 女性が働いて、家計と社会を支える姿なんて、よもや思い浮かびもしない。

 時代の現状が、まったく見えていない。
 戦前回帰の、暗愚な自民保守派の、石頭なんてしょせんはその程度なのだ。

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