大リーグのオールスターでロボット審判が導入された。
来季からは公式戦での導入も検討されているという。
かの国の人間の審判員が、いかにトンデもない連中であるか。それは過去投稿(注)に書いた通りだ。
ヤツらの出る幕がなくなるというのは、まことに慶賀慶祝の至りである。
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「ロボットだって間違える」と言う者もいる。
実際その判定に、選手が「えっ?」という表情を見せることもある。
だが厳密には、あれはミスではない。ロボットはあくまでも、プログラムされた通りに判定しているのだ。
むしろこれまで人間たちの方が、ルール通りではなかった。審判も選手も慣行上、微妙にルールを曲げて理解していた。その都度「柔軟に」運用している部分があったのだ。
ロボットはその齟齬を指摘しているにすぎない。
野球規則を字義通りに当てはめれば、こちらの解釈が正しいのですよ、と。
もしそれがご不満なら、ルールそのものを改めるか、ご自分の肌感覚を修正するか。どちらかの対応をお願いいたします。……
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いや百歩譲って、万が一実際に「機械もミスをする」ようなことがあったとしたも。それはそれで構わない。
選手たちが人間の審判に腹を立てるのは、ミスをしたからではない。人間は誰でも間違えることはある。それを許容できないほど、選手たちは狭量ではない。
ただ人間の審判は、しばしば故意に誤審をする。不正な判定をする。
プレイヤーに対する個人的な好悪やら。人種偏見やら。以前自分のジャッジに、抗議をされたことへの意趣返しやら。
そんなケチな動機のために、わざとストライクをボールとコールし、セーフをアウトだと強弁する。
選手たちはそんな不条理に、耐えられなかった。
だがロボット審判は、けっしてそれをしない。
万が一ミスを犯すことはあったとしても、悪意の誤審をすることはない。「面当て」のような判定で、仕返しをされたりすることはない。
だから選手たちは、安心してプレーに打ち込めるのだ。
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安心してプレーに打ち込める――それがもっとも肝要なところだ。
人間の審判を問い詰めても、絶対に白を切る。故意誤審など言いがかりだ、と認めようとしない。
証拠があるはずもないから、結局は水掛け論になる。
だが実際に作為があったかどうかは、実は大して重要ではない。
作為があるのではないか、と選手が疑心暗鬼に陥ってしまう――そういう構造自体に問題があったのだ。
ロボットが相手なら、もうそれはない。
余計なことを考えずに、ただ安心してプレーに打ち込める。絶対的にフェアな土俵で、戦うことがようやくかなうのだ。
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実は、話は野球にかぎらない。
そこには人間界の、万事に通底する哲学がある。
わが身に不幸が降りかかったとき。もしそれが純粋に「不慮の事故」であるなら、諦めることもできる。
神の定めた運命だというなら、嘆きは深くとも、憤怒に身を焼かれることはない。
だがそこに「人間の魂胆」が見え隠れしたとき、
誰かが自分を陥れた。狙い撃ちにされた。代わりにいい思いをしているヤツがいる。そう考えたとき、わたしたちはとても平静ではいられない。
つまりはそこでも、薄汚い人間どもに代わる公明正大な「ロボット」のジャッジが、どうしても必要なのだ。――
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