風俗店の詐欺商法――女の子は写真で選べます

 風俗店に行くと、普通はまず写真を見せられて、そこから女の子を選ぶ。
 たいていパネルの形で置いてあるので、これを「パネル写真」と呼ぶ。

 遠い昭和の時代には、まだ写真の修正なんてできなかった。
 ちょっと写りがよすぎるにしても、明らかに本人とわかる写真が並んでいた。
 もちろんまったく別人の写真を見せる店もあった。どっかの雑誌に載っていた、芸能人の顔だったりする。
 だがそんな店は、たちまち信用をなくして淘汰された。

 もちろん今では、写真加工が当たり前だ。
 本人度70%くらいの、盛りまくった写真がパネルに載る。
 素顔は全然ぱっとしない女の子が、まるで魔法でも用いたかのように美人に写るので、これを「パネルマジック」、略して「パネマジ」と呼ぶ。
 ネットのHPに載る写真も、たいていこのパネマジ写真である。

     * 

 だまそうとする店と、だまされまいとする客。
 風俗通いなんて、今やこのパネマジとの戦いである。

 常連になれば、この店のパネマジ度は何割くらい、写真がこのくらいならおおむね実物はこのくらい、と見当がつく。
 本物の女の子の顔が、だいたい目に浮かぶ。
 それではだましたことにならないので、店もさらなる戦術に打って出る。
  
 たとえば風俗店のHPは、たいてい常連様だけが入れる、パスワード付きの会員専用ページを設けている。
 そこに一般用ページとは別の、女の子のスナップ写真を載せていたりする。会員様にだけは素顔をお見せする、というていなのだ。
 スタジオ撮影の美々しい作りとは違う。店内やら、店の前の通りやらで、気楽に撮った写真が並ぶ。
 それを見た会員は、ふーん素顔の女の子はこんななんだ、と思い込む。

 そこが付け目なのだ。
 今となってはスナップ写真だって、いくらでも修正は可能である。
 そのうえ任意の画像を、インスタント写真(ポラロイド、チェキ)風に、加工するソフトもあるらしいから食わせ物なのだ。(注)
 スナップ写真は、人間の日常をありのままに切り取るもの。そんな思い込みを、見事に利用して、客をだましにかかるわけだ。
 
     *

 ネットのHPに上がる女の子の写真には、薄いボカシをかけているものもある。
 こちらは加工というよりも、本人を特定されないための配慮である。
 たとえ特定されたとしても、違うと白を切れる程度にまで、あいまいにしておくわけだ。

 だがこれもまた、遊び慣れた常連には役に立たない。
 靄の向こうの鮮明な素顔を、一種の神通力で――透視眼によって見通してしまう。
 もちろん実際は見るというより、想像力で足りない情報を補って、脳裏に浮かべているわけだ。
 
 靄の向こうの鮮明な素顔――だがしかし、ここにもまた危険な思い込みがある。
 ボカシの向こうには素顔がある。隠ぺいの陰には真実があるはずだ、と勝手に決めつけているわけだ。
 もちろん一般の、外の世界では、それで構わない。そんな前提が、すべての論理的思考の出発点となる。 

 だがしかし詐欺師たちは、そんな常識さえ、逆手に取ろうとするのだ。
 すなわちまず、女の子のありのままの素顔の写真を、相当な美形に加工しておく。
 そうしてできた「パネマジ」の写真に、ボカシをかけるのだ。

 エロおやじたちの神通力は、ボカシを見通すことはできる。
 パネマジの原本になる素顔を、復元することもできる。
 だがその両方を同時にやられてしまうと。パネマジの写真にボカシをかけられてしまうと、もうお手上げだ。
 二重に掛けられた鍵を、外すことはできない。というよりも、まさかそこまでやってくるとは思わないので、二重に外すという発想そのものが、浮かばないのだ。

 そんな人間の安直な思い込みに、風俗店の詐欺師たちは、ものの見事につけ込んでくるわけだ。
 どうだい? 頭いいだろう? 思わず尊敬しちゃうだろう(笑)
 

     * 

 風俗店のHPにはたいてい、女の子が各自の写メ日記(注)を載せるコーナーがある。

 ここでもまた、客はしばしば誤った思い込みを抱く。
 まずは「日記」という言葉に暗示を受けて、そこにあるのは文章も写真も、正直なものにちがいないと感じてしまう。お店はともかく女の子本人が、客を欺くことなどよもやあるまいと。
 あるいはこの手の写真は、思い切り「盛る」ことはあっても、「贋造」レベルの加工はできないと勝手に勘違いする。
 だがしかし――

 かつてある男が、写メ日記を当てにして、女の子を指名した。
 もちろん、けっこう遊び慣れた客なので、そっくりそのまま信じたりはしない。
 三割か、四割引きくらいで見ておこう。でも写真が絶世の美女だったら、最悪「中の上」くらいの女が出てくることはあっても、それ以下はない。――というのが、風俗遊びの常識だった。
 少なくとも、その日までは。

 だが常識はひっくり返った。コペルニクス的転回によって。
 ついでに客も、ひっくり返った。
「ひとみです」と名乗りながら現れたのは、どうみても女相撲の力士だった。
 どんなにハイテクを用いて加工をほどこしたとしても、これ・・あれ・・になることはない。――

 客の気持ちを察して、女が釈明した。
「写メ日記ですかあ? 身バレ(=身元がバレること)が怖いから、別人の写真を載せてます」
と、しゃあしゃあと言う。

     *

 身バレが怖いなら、写メ日記をやるな。日記だけ書いて、写真は載せるな。
 載せるなら、顔だけ隠せばいいだろう。

 百歩譲って、よしんば別人の写真を借りるとしても。
 自分と同レベルの、女のものにしろよ。何で女力士が、絶世の美女になりすましてんだ。
 どうみても、身バレ防止が動機じゃないだろ。

 殺してやりたい、とつくづく思う(笑)

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