オリンピックが始まった。
わが国では宮田笙子の出場辞退が話題になったが、海の向こうの英国では、馬術の金メダリストのシャーロット・デュジャルダンがやはり辞退に追い込まれた。(注)
調教で激しくムチで馬を叩いた4年前の動画が流出して、スキャンダルとなった。動物虐待だ、と激しい非難を浴びたのである。
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彼女の調教が、どんなに異常なものであったのかは知らない。
だが一般論として、「馬にムチは動物虐待」と結論するのは、あまりにも見当はずれである。
なんたって馬は、人間の10倍近い体重のある巨体である。感じる刺激は10分の1になる計算だ。
ムチで打たれて痣だらけになるのは、人間だからだ。
馬たちはせいぜい、デコピンされたくらいにしか思っちゃいない。
頭の悪い人間は、客観的な動物の姿を見ることができない。
すぐに擬人化して、感情移入しようとする。
「まあ、ワンちゃん裸でかわいそう」と、犬に服を着せる。
「ネコちゃんがお腹を空かせて死んでしまう」と、毎朝野良猫にエサをやる。
それと同じ愚を、馬についても犯しているわけだ。
ムチで打たれて酷使され、命を落とした奴隷たちの姿でも重ね合わせて、しきりにカワイソがっているわけだ。
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馬術であれ競馬であれ、パフォーマンスを上げるには、「人馬一体」であることが絶対に必要だ。
そのために両者は、情愛の絆で結ばれていなければならない。
ただ恐怖だけで、馬を支配しているようなコンビなら、金メダルなんて獲れたはずはないのだ。
練習でしくじった選手に、この次はちゃんと頑張れよ、とコーチが肩をポンと叩く。
これを英語では、「打つ」の”hit” と区別して、”pat” と言う。虐待でも懲罰でもない。激励と愛情の表現である。
馬の場合はこれをムチで行う。ただそれだけのことなのだ。
レースの最中は、さあここで全力疾走するぞ、と合図を送る。
馬の場合はこれをムチで行う。ただそれだけのことなのだ。
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だいたいあの馬たちは、何でメシを食っているんだ?
演技をして、レースで走って、飼葉をもらっている。それがあいつらの仕事なのだ。
仕事をちゃんと覚えるまでは、多少の厳しい指導はどうしても必要だろう。
最近では「パワハラ」という言葉が流行ってしまった。
新入社員に上司が仕事を教えようとすると、パワハラになりますよ、と難癖をつけるらしい。
本人たちが訴えるならまだわかる。
だがもし、外野で見ている赤の他人の女どもが、「虐待だわ、新人さんたちがカワイソウ」とわめき出したらどうだろう?
シャーロット・デュジャルダンとその馬に対して、今まさになされていることは、きっとそういうことなのだ(笑)
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